ボートレース界のスーパースター・峰竜太(41=佐賀)が30日、ボートレース桐生で行われたSG「第72回ボートレースメモリアル」で優勝。初のGRANDE5完全制覇レーサーとして3億円のインゴットを獲得。優勝賞金なども合わせて今大会だけで約3億5000万円を一気に稼いだ。しかし、このボートレース界のスーパースターも引退を考える苦しい時期もあった。引退から歴史的偉業達成までモチベーションを引き上げた原動力とは…。

「正直、引退を考える時もありますよ。体の衰えも感じますしね」――。峰がこう話したのは昨年3月のことだ。

 当時、2024年8月のからつお盆シリーズから約7か月、優勝から遠ざかっていた。さらにケガもありモチベーションも下がっていた。トークショーなどでジョーク交じりに「引退」という言葉を使うこともあっただけに真意を確認すると冒頭の答えが返ってきた。

 この時「人に何かを教えたいという思いはありますね。ボートレースのことはもちろん、それ以外も…。自分がやってきて身につけたものを伝えたい」と引退後のことも語っていた。

 その一方で、こうも続けた。「でも、やっぱりもう1回グランプリを取らないと辞められないんですよ。2回取ったけど、やっぱり3回目を取りたい。グランプリ優勝戦1号艇で転覆。やっぱりあれを取り返さないと…。グランプリの借りはグランプリでしか返せない。住之江のグランプリで優勝戦1号艇に乗って優勝したい」。21年の住之江グランプリでは優勝戦1号艇で1M転覆し、後続3艇も巻き込んだ。完走は2艇で3連単、3連複などが不成立となり売上総額42億7752万6800円のおよそ96%にあたる41億1426万3700円が返還。この借りを返すまでは辞められない。この思いが支えだった。

 そして、峰が出場するレースは確実に売り上げが伸びる。自身にファンをひきつける魅力があること、売り上げに直結することを自覚し「ボートレース界を盛り上げたい。それが僕の仕事だと思っている」と新たなモチベーションになっていた。

 昨年11月まるがめ73周年記念で1年3か月ぶりの優勝を飾ると今年3月には蒲郡SGクラシックを制するなど復調モードに入った。この時、新たな取り組みを始めていた。「今までとは全く違う考え方のプロペラの形を試しているんですよ。結構、手応えはあるのでこれを煮詰めていきたいと思っている。みんなと同じことをやっても勝てないですからね」。レース場では早い時間からプロペラ調整とプロペラ調整のベースとなるプラスチック製のゲージを作る作業を繰り返す日々が続いた。

 もともと仕上げスピードをはじめ調整力にも定評があったが、さらに“進化”。前回SGのびわこオーシャンカップでも準Vと結果につなげた。水面だけではなくファンサービスもパワーアップ。「ファンに会いたい。喜んでもらいたい」と積極的にトークショーなどイベントに出演。イベントではプレゼントを持参し、時間が空くと「場内、練り歩きましょうか? 盛り上がるでしょう」と提案することもあった。

 全ての行動は「41億円の借りを返したい」「ボートレース界を盛り上げたい」という思いが根底にある。GRANDE5完全制覇を前に「想像以上のプレッシャーを感じている。グランプリとは違う感じ…」と本音を吐露した。優勝戦当日に激励に訪れた日本モーターボート選手会の江口晃生代表も「緊張しているな。やっぱり最初で最後、金額、話題性、インパクトがあるからね」と峰の心境をおもんぱかった。そんなプレッシャーをはねのけて達成した歴史的偉業。ボートレース界のスーパースターの輝きは増すばかりだ。 

 ★峰竜太コメント「勝ったけど、実力は毒島さんの方が上だった。まだ僕は実力不足。今回、足りない部分が分かった。運が良かっただけ。エンジンの引きも節間の展開も運。でも、それは自分のスター性でもある。これを持っている僕はボートレース界のため、ファンのために盛り上げていかないといけないと思っています。GRANDE5は達成したけど、まだ住之江のグランプリがある。優勝戦1号艇で勝ちたい。これが目標です。まだまだ強くならなければいけないと思う。まだまだ引退を考えるのは早かったですね」

 ◆GRANDE5(グランデ5)クラシック、オールスター、メモリアル、ダービー、グランプリの歴史あるSG5大競走のこと。2014年以降、対象SG全てを最初に制した選手に3億円相当のインゴットが贈られる。