多くの観光客でにぎわう東京・浅草で、日本初の“人力車の車夫(しゃふ)DJ”として人力車を押す女性がいる。関森ありささん(29)だ。その姿はメディアで取り上げられ、出演した日本テレビ系「踊る!さんま御殿!!」(火曜午後8時)が18日放送されることになった。学生時代にアナウンサーの夢破れ、一念発起した半生に迫った。

 人力車を引いて乗客を運ぶ車夫のなり手は、男性が9割だ。男社会の業界にあって関森さんは週4日、浅草で人力車を押している。身長は157センチ。成人女性の平均と変わらない。大人の男性2人を乗せれば、人力車を合わせて総重量は200キロ超。それでも笑顔は絶えない。

 関森さんは2018年から観光人力車「天下車屋(てんがしゃや)」に在籍。今年は浅草エリアを担当する「店長」に就任した。浅草で18社ある人力車運営会社で、女性店長は関森さんただ一人だ。

 ブラックの法被(はっぴ)姿の関森さんは、任されている新人の採用や研修について「浅草の街や人を愛して、感謝を忘れないことを伝えています。体力やコミュニケーション力が重要というイメージがあるかもしれませんが、笑顔で声を掛けるなど一生懸命に取り組む姿勢が大事。お客様に『頑張っているから乗りたい』と思っていただけることも多いです」と力説する。

観光案内する関森ありさ
観光案内する関森ありさ

 出身の東京・江東区を「盛り上げたい」とも語る。その理由は19年からラジオFM局「レインボータウンエフエム放送」(以下レ社、同区)の局員として働いているからだ。

 自身がDJを務める番組「水曜スペシャル」今月5日放送では“車夫DJ”として、ゲストのお笑いコンビ「NON STYLE」石田明を人力車に乗せ、浅草を巡りながらトークした。

 まさに二刀流。「車夫もラジオDJも天職」と言い切るが、どちらの仕事も就いたのは挫折がきっかけだった。

 大学時代はアナ志望でアナスクールに通いつつ、全国の約100社もの入社試験に挑戦。エントリーシートのアピール材料として、スクール講師からすすめられたことをきっかけに車夫のアルバイトを始めた。入社試験では最終面接に進んだ社もあったが、最終的に全滅した。

 就職先がないまま大学を卒業した19年4月。ラジオ好きだった祖父との縁で入社試験を受けたレ社の局長から「人力車を続けるなら採用する」と提案され、入社を決意した。天下車屋の社長からの「目の前にやることがあるんだったら2つとも一生懸命、頑張った方がいい」との助言もあり、二足のわらじに挑戦した。

 車夫とラジオDJに向き合って約6年。奮闘する姿は多くのメディアで取り上げられた。学生時代に説明会で訪れた東京・汐留の日本テレビの「踊る!さんま御殿!!」からもゲストとしてのオファーが舞い込んだ。

 同番組公式X(旧ツイッター)が11日更新され、次週18日放送は「東京下町バトル」の回で関森さんのほか、新日本プロレスのウルフアロン、元テレビ東京でフリーの松丸友紀アナウンサー、「KEY TO LIT」猪狩蒼弥らの出演が報告された。関森さんは「江東区代表」。車夫姿で日テレ番組に出演するとは学生時代は想像もできなかった。

「楽屋であいさつをさせていただいた時も明石家さんまさんはじめ皆さんが本当に優しくて。人力車とラジオDJをやっていることもお話しさせていただきました。松丸アナには『(入社試験で)たくさん落ちてしまったんですけど、松丸さんみたいなアナウンサーを目指していたんです』とごあいさつ。松丸さんから『今、こうやって共演できているんだから、自分がやってきた道は間違いじゃないよ』と言っていただいた時はジーンとしました」

 関森さんの後を追いかけ、女性車夫として門を叩く後輩も出てきた。

「江東区、浅草の街をもっともっと盛り上げていきたい。後進を育てることもそう。自分の経験を若い子に教えていけたら」と目を輝かせた。