7月も後半にさしかかり、全国的に夏休みムードが漂う中、27日には都内で隅田川花火大会が開催される。毎年テレビ中継も行われる一方、開催に至るまでの工夫や準備、そして花火大会の現在についてはあまり知られていない。そこで今回は隅田川花火大会で花火の製造・打ち上げを担当する、株式会社丸玉屋小勝煙火店の代表取締役・小勝康平氏に花火の裏側について聞いた。

花火に思いをはせる小勝氏
花火に思いをはせる小勝氏

 元治元年(1864年)に創業し、今年で創業160周年を迎えるという丸玉屋小勝煙火店。大小合わせて年間約100件のイベント・大会で花火を打ち上げているという。小勝氏は、現在は季節を問わずに打ち上げ花火の需要があると語る。

「夏の風物詩ではありますが、もともとのイベント数が多いこともあって、秋や冬にずらして開催することも多いですね。秋は涼しくて外で見やすいですし、空気の澄んだ冬は色がきれいに見えますよ」

打ち上げ場所に合わせて花火のサイズも変化
打ち上げ場所に合わせて花火のサイズも変化

 そのため工場も年間のスケジュールを組んで、計画的に花火を製造しているという。直径約30センチの10号玉は、凝ったものでは職人が1日で1個しか作れないほどの作業量になることも。小勝氏も「注文を受けた翌週に花火は打てませんから。大げさかもしれませんが、花火大会が終わった瞬間、もう来年に向けて動いていると考えてもらっても差し支えないです」と準備期間の長さを強調した。ちなみに現在も花火製造はほとんどが職人による手作業。「星」(空中で光る火薬)がついて消えるタイミングをそろえられるようになるには、1、2年の修業では足りないという。

「自分のことを『一人前だ』と言っている人は見たことがないですね。ずっと勉強していくしかないので」という小勝氏の発言には、職人としての矜持が垣間見えた。

 半面、点火作業はコンピューター制御によるものが主流だ。30年前ごろから導入され、現在ではほぼ100%が人の手に頼らない遠隔点火となっているという。事前に打ち上げる時間をプログラミングして行うこともあり、点火のタイミングは100分の1秒単位で調整が可能。結果的に各地の花火大会で主流となっている、会場の音楽とシンクロさせる花火が実現した。技術の進歩は、会場で花火を見る楽しみをさらに増やしていたのだ。

 そして丸玉屋小勝煙火店が手掛ける大会の中でも、特に知名度の高い大会が隅田川花火大会だ。戦後間もない時代、丸玉屋小勝煙火店がGHQに許可を得て再開したというゆかりもある大会だが、「他と比べるとかなり特殊な大会ですね」。

 そう指摘する一番の理由は打ち上げ場所だ。海や湖を使う大会とは異なり、都内の河川で打ち上げる花火には規模の制約がかかってしまう。他の大会で人気の10号玉は河岸からの距離等の問題で使用できず、今年小勝氏が担当する第二会場では、2・5号玉までのコンパクトな花火でプログラムを構成する必要があるのだ。

「脇に高速道路は通っているし、人もたくさんいるし…。ここで打ち上げるのかと、初めて担当した時は思いました」

 それでも下町らしくにぎやかな大会になるよう、打ち方や組み合わせを工夫して演出しているという。「どうしても隅田川の花火をやりたくて入った従業員もいますから。特別扱いするわけではありませんが、それだけの歴史ある花火大会ですし、求められている仕事はきっちりこなさないといけないと思っています」と意気込んだ。

 そんな隅田川花火大会だが、新型コロナウイルス流行後は何度も中止の憂き目に遭っていた。「(コロナ禍で)仕事は本当に少なかったですね。中止の年が続いて、必要とされてないのかもしれないという不安はよぎりました。昨年、4年ぶりに復活して、お客さんからの喜びの声を聞けたのはとてもうれしかったです」

各種大会・競技会のトロフィーが並ぶ
各種大会・競技会のトロフィーが並ぶ

 また、近年はドローンショー等、光を楽しむエンターテインメントの競合相手も登場したが…。小勝氏は「初めてドローンのショーを見た時にはすごいなと思いましたね。脅威に感じる一方で、こんなこともできるのかという感動もありました」と率直な印象を告白。その上で「ただ花火は火薬を使う分、迫力や響き方では負けてないと思っていますし、ドローンやレーザーと共演してみると、今までになかった内容の良いエンタメになっていて。相乗効果もあると思いますし、これからもコラボはやっていきたいですね」とライバルの登場を前向きに捉えていた。

 各地の夜空を鮮やかに彩る打ち上げ花火。今年は職人の思いと工夫に思いをはせながら、じっくり楽しんでみるのはいかがだろうか。

 ☆かぶしきがいしゃまるたまやおがつえんかてん 東京・府中市に本社を置く、元治元年(1864年)創業の老舗花火製造会社。隅田川花火大会をはじめ、全国大小の花火イベントで製造・打ち上げを担当。現在はアジア・ヨーロッパ等の国外で開催されるイベントにも進出している。

公式HPは【https://www.mof.co.jp/】。