もし、潤沢な収入を得てタワーマンションに住む若手芸人がいたら――。夢物語のような話だが、実在する。吉本興業所属のお笑いコンビ「ホテル」橋本大祐(31)。〝タワマン芸人〟の生活実態を調査するため、大阪市内にある自宅を直撃した。

 厳重なセキュリティーをくぐり抜け、高層階に到着した。インターホンを鳴らすと、表情の柔らかい好青年が出迎えた。

 仕事柄、多くの有名人の顔を見てきてはいる。ただ、橋本をテレビで見たことはない。当然、街中で会っても反応できないだろう。

 だが、それは私が昭和のオヤジ世代だから。若者世代の認知度は高いという。

 LINE上のトークのやり取りを〝創作〟し、それを物語化するユーチューブチャンネル「ホテル橋本のオリジナルLINEストーリーズ」(登録者数14万人)、実の妹でミュージシャンの橋本菜津美とコラボしたティックトック「橋本兄妹」(フォロワー6万5000人)を展開。街中や飲食店で若者に声を掛けられることも珍しくはない。なるほど。SNSで得た高収入があるためタワマン芸人が成立するわけだ。

 貧しくも愚直に芸に生きる。そういう考えが美徳だった時代は終わったのか。橋本の志を聞くと胸の内は純粋だった。

「本当は相方と2人で漫才やコントをお披露目して劇場に出る本数を増やしたり、皆さんが見ているお笑い芸人のようにテレビでロケに出たりというのが最終目標ではありますよ」

 収入があれば売れていなくてもいいという話ではないようだ。

 全国に8000人ほど存在するといわれるお笑い芸人。その競争率は高く、テレビで毎日、顔を見るスターは一握りだ。そこに届かなくとも努力の継続は怠らない。

「自分にできること、得意なことはなんやろ。それが物語を作ったりすることで、これは(笑いの)ネタ作りにもつながる」

 SNSでバズることと芸人として売れることは、正比例にならないだろう。

「『タワマン芸人』ってちょっと金銭感覚がずれていたり、稼ぎすぎて頭がおかしくなっていたりすると思われがち。そういうキャラはできますけどね。でも、お客さんにめちゃくちゃ嫌われる。東MAX(東貴博)さんみたいに札束で汗を拭くほど振り切っていたらいいかもしれないですけどね」

豪華なタワマンでくつろぐ
豪華なタワマンでくつろぐ

 SNSでの最高月収は270万円ほどだという。あくまで最高額であり、生活可能な収入をキープするのは難しい。多くのバイトを経験した過去もあり、お金の価値はもちろん理解している。

 2020年ごろにSNSがバズり、翌21年に現在の住居へ転居した。

「ここに住み続けてこそのキャラクター。絶対に退去してなるものかっていうのはやっぱりあります」

 昨年の「M―1グランプリ」で健闘したエルフや「女芸人No.1決定戦 THE W」で優勝した天才ピアニストと同じNSC38期生(15年入所)。同期の活躍の陰でお笑いを辞めた芸人を何人も見ている。30代前半となると結婚など転機も多い。売れないことによる金銭的問題と芸人引退は無関係ではない。

 いつか芸人として輝くためにも、SNSでバズり続ける――昭和のオヤジには理解できないサクセスロードを橋本は歩み続けていく。

☆はしもと・だいすけ 1991年10月29日生まれ。兵庫・川西市出身。161センチ。2016年1月に森本哲央と「ホテル」を結成。プロ野球好きで大のヤクルトファン。

☆ようじ・ひでき 1973年生まれ。神戸市出身。関西学院大卒。98年から「デイリースポーツ」で巨人、ヤクルト、西武、近鉄、阪神、オリックスと番記者を歴任。2013年からフリー。著書は「阪神タイガースのすべらない話」(フォレスト出版)。21年4月にユーチューブ「楊枝秀基のYO―チャンネル!」を開設。