「老人が若者より早く死ぬとは限らない」といった意味だ。

「人生百年時代」という言葉が盛んに使われている。現在、「日本人の男の平均寿命が81歳余、女のそれが87歳余」とされていて「今、日本に生きている人は、平均的にその寿命まで生きていける」と錯覚している人がほとんどだ。

 しかし、「今年の平均寿命」は「今年生まれた0歳児の予測平均余命」のことだ。

 現在の平均寿命がかくも長いのは、明治~大正~昭和初期生まれの90歳代~100歳代の方が数多くいらっしゃるからに他ならない。

 明治36(1903)年1月2日生まれで、今年4月に惜しくも逝去された福岡県の田中カ子(ね)さんは119歳3か月の天寿を全うされた。2021年9月の台帳で、日本には百歳以上の長寿者は8万6000人余いらっしゃる。

 こうした長寿者達は、戦前・戦後の食糧難の時期を空腹で過ごし、電気洗濯機や掃除機などの家電製品もなく、バスや電車などの交通網も発達していなかった中で、肉体労働や長距離の歩行を余儀なくされた人々である。

 空腹の時間が長くなると、Sirtuin(サーチュイン)長寿遺伝子が活性化する(2000年、米国マサチューセッツ工大、ギャラン教授)こと、Autophagy(オートファジー)現象が起き、細胞が若返る(2016年、大隅良典博士に与えられたノーベル生理学・医学賞)こと、などが明らかにされている。今の百歳者達は、自らは気づかない間に、こうした“長寿”への恩恵を受けてきた人達なのである。

 24時間、いつでもコンビニで物を買って食べられる、肉体労働や長時間歩行をする必要がなくなった現代の若者に、ガンに罹る人が増え、両親より早くなくなる「逆さ仏」現象が起きている。正に「老少不定」である。

 ◆石原結實(いしはら・ゆうみ)1948年、長崎市生まれ。医学博士。イシハラクリニック院長として漢方薬と自然療法によるユニークな治療法を実践するかたわら、静岡・伊豆でニンジンジュース断食施設の運営を行う。著書は300冊超でベストセラー多数。最新作は生島ヒロシ氏との共著「70代現役!『食べ方』に秘密あり」(青春出版社)。