人類はすべて、狩猟生活の時代を過ごした経験がある。日本人も例外ではなく、鹿や猪、兎などの肉をたくさん食していた時代があったに違いない。しかし、殺生を嫌う仏教が伝来し、広まるにつれて、肉を食べる習慣がなくなっていった。
「シシ(猪の肉)食った報い」(肉を食った罰(バチ)だ)という言葉もあるくらいだから、肉食が敬遠または敵視されていたことがわかる。
とは言え、肉の旨さの誘惑には勝てず、庶民に肉食を禁じていた徳川家康も、「薬食い」と称して、井伊家から献納された近江牛の肉の味噌漬けをよく食していたという。
「五段目を 蛇の目に包む 麹町」
という川柳の「五段目」とは猪の肉のこと、「蛇の目」は昔の傘の紙のことで、実際に東京の麹町、平河町や両国橋あたりには獣肉屋があった由。今でも、大相撲の国技館のある両国の橋(両国橋)のたもとに「ももんじや」というシシ(猪)肉屋がある。
肉は、必須アミノ酸が存分に含まれる重要なタンパク源で、漢方でも「(肉は)胃腸の働きを補い、筋力を益し、排尿を促し、むくみをとる」働きがある、とされている。
牛肉はビタミンB2や鉄分が多く含まれ、体を温める作用が強いので、洋の東西を問わず、病気の回復期には牛肉スープや牛肉粥(細かくたたいた牛肉に、生姜汁、醤油、塩を練り混ぜ、粥の中に加えて煮込む)が、体力回復後の妙薬として使われてきた。豚肉は洋風、中華風、和風のどんな料理にも合い、疲労回復のビタミンB1が抜群に含まれている。漢方でも「腎気補益(体力・免疫力増強)、解毒、解熱」に効あり、とされている。
◆石原結實(いしはら・ゆうみ)1948年、長崎市生まれ。医学博士。イシハラクリニック院長として漢方薬と自然療法によるユニークな治療法を実践するかたわら、静岡・伊豆でニンジンジュース断食施設の運営を行う。著書は300冊超でベストセラー多数。最新作は生島ヒロシ氏との共著「70代現役!『食べ方』に秘密あり」(青春出版社)。












