「世の中は豆で四角でやわらかで、また、老若に憎まれもせず」
豆腐は我が国には遣唐僧らによって伝えられ、寺院の精進料理の素材として重宝がられた。一般庶民の食べ物になるのは、江戸時代になってからで、天明2(1782)年には、珍しい豆腐料理の解説書「豆腐百珍」が出版された。
豆腐は、その「やわらかさ、頼りなさ」から「のれんに腕押し」と同様の意味で「豆腐にかすがい」とも使われる。
しかし、栄養学的には非常に優れたタンパク質(豆腐の原材料の大豆は“畑の肉”とも言われる)と、高脂血症を防ぐリノール酸やリノレン酸などの不飽和脂肪酸、脳の働きをよくするレシチン、ビタミンB1(疲労回復)・B2(強肝作用)・E(老化予防)などをバランスよく含む超健康食品である。しかも、消化・吸収率がほぼ100%であるため、胃腸病の人、赤ちゃんやお年寄りの格好の栄養補給食品となる。
昔の高僧に、精進料理だけ食べて長寿を保つ人が多かったのも、この豆腐の栄養価のおかげだった、と思われる。
「本草綱目」にも「中を寛(ひろ)くし、気を益し、脾胃を和し、血を清め、熱を散ずる」(胃腸の働きをよくして気力を高め、血液を浄化し、発熱を抑える)とある。
「豆腐と芸者は硬くては売れぬ」「豆腐と浮世は軟らかでなければいかず」「世の中は豆で四角でやわらかで、また、老若に憎まれもせず」などの諺は、豆腐のような柔軟な生き方を礼賛している。
◆石原結實(いしはら・ゆうみ)1948年、長崎市生まれ。医学博士。イシハラクリニック院長として漢方薬と自然療法によるユニークな治療法を実践するかたわら、静岡・伊豆でニンジンジュース断食施設の運営を行う。著書は300冊超でベストセラー多数。最新作は生島ヒロシ氏との共著「70代現役!『食べ方』に秘密あり」(青春出版社)。












