熱いぜ、冷食――。かつては冷凍庫にストックしておくものだった冷凍食品が時代とニーズに合わせて急速な進化を遂げている。おいしさを閉じ込める注目の技術に流通ウォッチャーの渡辺広明氏(54)も「完全に従来の冷食のイメージを破壊した」と大興奮。その全貌やいかに。

 コロナ禍で冷凍庫の売り上げが伸びている。日本冷凍食品協会によると、2020年の家庭用冷凍食品の国内生産量は前年比18・5%増の3748億円となり、需要減で14・1%減となった業務用冷凍食品を統計上初めて逆転した。21年は反動で落ち込むのではないかと見る向きもあったが、実際には冷食ブームはさらに“加熱”。ついにはセカンド冷凍庫を買い求めるニーズまで生み出していたのである。

「そもそもコロナ前からコンビニ各社は冷食の充実に取り組んでいました。ここで取り上げた冷凍フルーツもそうですし、おつまみ系もそう。その背景には共働きによる生活スタイルの変化があり、家庭用冷食はストック需要に即食需要を巻き込んで伸び続けてきたわけですが、巣ごもり需要が拍車をかけたわけです」(渡辺氏)

 なかでも存在感が際立つのが冷凍食品専門店の存在だ。液体急速凍結機「凍眠」の製造販売を行う株式会社テクニカン(横浜市都筑区)は昨年2月に横浜・仲町台にTŌMIN FROZEN(トーミン・フローズン)をオープンさせた。

 店内には約500種類のオリジナルの冷食が並び、魚や肉といった材料だけでなく、すしや高級料理店のシェフが作った料理まで並んで目移りするほどだが、ちょっとお高い…。

「でも、一度召し上がったらガラケーからスマホに変わったくらいの質の違いを感じていただける自信があります。その意味でも価格競争に巻き込まれるメニューよりも『ここでしか買えない商品』に重きを置いています」と語るのは広報課長の津田谷英樹氏。

 急速冷凍のすごさとは何なのか? 一般的な冷凍庫では水分が氷に変化する温度帯(=最大氷結晶生成温度帯)をゆっくり通過するので結晶が大きくなり、これが食品内部の組織を傷つけてしまう。一方で急速冷凍は最大氷結晶生成温度帯を一気に突破するのでフレッシュに近い状態をキープ。急速冷凍の中にも冷たい空気や液体窒素を吹き付ける方法があるが、「凍眠」はマイナス30度のアルコールを液媒介にして急激に温度を下げるので、解凍時のドリップが極端に少ないという。
 ここにしかない商品として注目を集めているのが、「獺祭 純米大吟醸45 寒造早槽 急速冷凍酒」だ。

「『南部美人』の久慈社長が高知で冷凍だと知らずにカツオを食べたときに急速冷凍に興味をお持ちになって、そこから蔵でしか飲めない生原酒(非加熱)が冷凍できないかと瓶のまま凍らせることに。そこからさらに久慈社長のご紹介で旭酒造さまと実験販売することになりました」(津田谷氏)

 自腹購入した記者もフレッシュでみずみずしい日本酒を満喫したことは言うまでもない。

 渡辺氏も「凍ったままの見た目がイマイチなものもあったが、食べれば違いは歴然。コロナ禍で試食販売は厳しいが売り方のブラッシュアップでもっと人気が出そう」と分析した。

 ☆わたなべ・ひろあき 1967年生まれ。静岡県浜松市出身。「やらまいかマーケティング」代表取締役社長。大学卒業後、ローソンに22年間勤務。店長を経て、コンビニバイヤーとしてさまざまな商品カテゴリーを担当し、約760品の商品開発にも携わる。著書に「コンビニが日本から消えたなら」(KKベストセラーズ)。