2014年もいろいろあったアニメ業界。そこで昨年12月に「ソードアート・オンライン2」(SAO2)を無事終えた伊藤智彦監督に加え、声優学校にも通っていたIカップグラドルの青山ひかるに2014年のさまざまなアニメの話題を振り返ってもらった。(WEB担当・徳重辰典)

 ――SAO2まずはお疲れ様です。2014年のアニメを振り返るわけですけど、伊藤監督。今年はどんなアニメ見ましたか

 伊藤:今年はあまりアニメを見てなかったですね。「ジョジョ」と、浜崎博嗣監督のファンなので「テラフォーマーズ」は見ていました。

 ――「テラフォーマーズ」はグロ描写の黒塗り問題がネットで話題になりました

 伊藤:みんな騒ぎすぎじゃないのかなとは思います。結局、放送局の裁量の問題ですね。日テレ深夜枠だったら普通に流せたかもしれない。実際に「寄生獣」を放送しているわけだし。

 ――なるほど。青山さんは今年は何を見ましたか

 青山:「キルラキル」に「SAO2」、「曇天に笑う」も見てました。あと「ラブライブ!!」です。

 ――ラブライブに対して女性の反応はどうですか

 青山:アイマス(アイドルマスター)よりウケがいいですね。アイマスって芸能事務所があっての話じゃないですか。ラブライブは学園の日常の中のアイドルなので、親近感がわくんだと思います。コスプレもラブライブが多かったんです。

 ――青山さんはレイヤーでもあるんですよね。コスプレだと艦これ(艦隊これくしょん)も目立ちました

 青山:ラブライブの次に艦これ。でもコスプレは露出が多くなっちゃって、露出制限が会場にできました。際どい子もいるんですよ。ミニスカートの中身がTバックだったり。レイヤーさんの写真撮影に制限はないので、ローアングルのカメラで狙われる。艦これからコスプレの露出が広まった印象はあります。水着の人もいたりと露出が過度に増えました。

 伊藤:アニメもそうですけど、ちょっとタガが外れてきてませんかね。妹ちょの問題(アニメ「最近、妹のようすがちょっとおかしいんだが。」が行き過ぎた性表現でBPOの指摘を受けた)もそうですけど。アニメ界の行き詰まりを感じます。おかしいということに気づいてほしい。それをやっているからといってDVDのセールスに跳ね返るのかと。「こんな過激なことやって「『やらおん』(アニメのまとめサイト)に取り上げられたぜ。ヒャッホー」っていう人がアニメ業界にもいる。もう少し考えたほうがいいのでは。

多すぎるアニメ本数、声優起用…現在のアニメ業界への危惧

 ――業界内の人で気にしている方がいるんですね

 伊藤:良くも悪くもプロデューサー陣が気にしてます。出社して一番最初に見るのが「やらおん」なんて人も。みんなネットを辞めた方がいい。

 ――伊藤監督はツイッターを辞められました

 伊藤:見ている時間があれば仕事してます。余分な雑音に振り回される。少なくとも制作会社の人は見ちゃダメ。まとめサイトに載ることを目的に作ってもダメでしょう。

 ――今のアニメ業界へ危機感がある

 伊藤:アニメの本数の増加傾向には以前から苦言を呈してますが、まだ減らない。2016年までは減らないといわれます。この業界に未来はないなと、一瞬アニメ辞めようかなとも思いましたよ。今はフル3Dの作品がもすこし増えてくんないかなと思ってます。アニメの仕事も増えてますけど声優になりたがる人も増えている。みんな、なぜ声優になりたがるのか。

 ――青山さんはもともと声優学校に通ってましたね

 青山:現実の私はこういう顔ですけど、アニメって絵の違いによって、現実とは全然違うキャラになり切れる。同じキャラでも声優さんの違いで印象が違う。それが好きだし、楽しいと思える。ただ今、声優さん目指しているのは私みたいなオタクが多いんですけど、アニメって見ていると感情が何でも提供されるので、想像力と表現力がなくなる。だから学校では小説や新聞を見るのが大事と言われます。

 ――声優オーディションを一度見たことがありますが、似たような方が多い

 伊藤:今まで見てきたものをやりすぎ。オーディションテープを聴いていると「なんで特に指定もしてないのに、みんな同じイントネーションで読んで、同じ文節で区切るんだ」となる。自由にやってもらうためにト書きを書いていないのにも関わらず。誰かの影響を受けて、それがアニメの普通と思っている。でも、それは大きな間違いです。

 青山:確かに最近の声優さんは個性がなくなって似ている感じの方が増えて、声質が聞き取れなくなっている。みんな同じような息遣いの方が今は多いかなあと思います。アニメはせっかくよいのに、声優でつぶしちゃっている作品もあるかなとたまに思います。その中でベテランの方が出演していると、飛び向けて個性があって惹かれますね。

 伊藤:やはり生き残っているベテランの方は個性がありますよ。

 青山:SAOのキリトくんを演じる松岡禎丞くんはアニメの初期に比べて、垢抜けた演技になりました。最初は童貞くさかったのに、今はかっこいい。

 伊藤:それはキリトが童貞じゃなくなっているからかも(笑い)。

 ――若い声優さんだと松岡さんのフォロワーは多そうですね

 青山:今多いですよね。

 伊藤:松岡くんは仕事しすぎ。彼はやはりうまいので、オーディションの中に入っちゃうと選ばれちゃう。使い潰されないか、すごく心配。

 ――男性声優は女性声優よりも固定の人が出る傾向です

 青山:一時期、同じキャストが違うアニメに出ていました。すごくかぶっている。

 伊藤:声優の起用はもっと冒険してもいいと思うんです。冒険しすぎると「銀の匙 Silver Spoon」みたいに地味目なキャスティングになっちゃうんですけど。でも、常盤役の庄司将之くんが「ブレイキング・バッド」の吹き替え(ウォルター・ホワイト・Jr.役)で出ていて、よかったなあと思いました。

ファンはいびつ!?アイドル、声優共通の苦労

 ――声優を育てながらアニメを作るのは難しいんでしょうか

 伊藤:育てる余裕はあるはずなのに、みんなやらない。あと「ドラえもん」だったら、のび太、スネ夫、ジャイアン、出来杉とキャラクターのバリエーションがあったのに、今はどの男性キャラにも女の子ファンがついてほしいから三枚目がいない。スネ夫を演じていた肝付兼太さんみたいな声優を育てようがない。村瀬歩くんも特徴的な声で「使ってくれる人いるかなあ」とSAO一期で使ったんですけど、先に「坂道のアポロン」で使われていて、俺が見つけたって言いたかったので悔しい思いをしました(笑い)。今は「ハイキュー!!」の主役。よかったなと思います。

 青山:SAOでアスナのお母さんに林原めぐみさんを使ったのは凄いと思いました。お母さんを誰がやるのか思っていて、そこに林原さん使ったのはすごい。実際の演技も言葉の重みがありました。

 伊藤:見ているみんながゾワッとなってくれて良かった。のび太のお母さんを三石琴乃さんがやっていたり、俺たちが十代の頃アニメを見ていた世代のヒロインが今、お母さん役をやっている。現在、林原さんは基本的にご家庭に専念されていて継続中のレギュラー以外はあまり出演されないのですけど、なんとかやってほしかったので、交渉しました。

 青山:フレイヤを演じているのが皆口裕子さんだったり、トールが玄田哲章さんだったり、素晴らしいなと。ここで使ってくるかと。

 伊藤:われわれのお遊びもありますが、神々はちょっと毛色の違うキャスティングをしたかった。あと、林原さんは一度会ってみたかった。それに他の声優の勉強にもなりますよね。ベテランの方がくると。緊張感が違いますから。

 ――アイドル声優という方も増えていて、例えば内田真礼が週刊誌で水着姿を披露したりしています。青山さんはグラビアアイドルですけど、こっちくるなとかはありませんか

 青山:そういうのはないですよ。いろんなこと、みんなやりたいんだなあと。声優さんはイベントもやってますし、ライブもやってます。タレントというくくりで一緒だと思います。

 伊藤:アイドル声優と立場的なところでいわれてますけど、アイドル的な立ち居振る舞いを事務所から聞いているわけではないし、スタジオ来るのも電車。帰りも一人で帰ったりして、ネット上で作り上げられているイメージよりも普通。だから逆に何かあったらと思うと怖い。

 ――元祖アイドル声優の椎名へきるさんも今年結婚しました

 伊藤:男性声優だと結婚を発表してない方もいますね。でもファンはネットの情報を組み合わせて、リアルな結婚相手を見つける。よく探し出せるなと思いますけど。

 青山:ファンの方は調べますよね。ツイッター同士を比較したり。

 伊藤:その情熱を別のことに生かせないもんですかね。宮野真守さんは結婚を発表した際に一時いろいろ騒がれましたけど、それを乗り越えた上で今も活動している。正しい気がしますけど、アニメファンはいびつですよね。

 青山:そうですよね。

 伊藤:メーカーはそのいびつさに乗って商売してる感じもしますけど、正直その不健全さはどん詰まりにきている気がしますし、閉塞感を感じる。完全なる監視社会ですよね。

 変わり行くアニメ業界 伊藤監督「3Dをやりたい」

 ――今年ですとジブリの製作部門解体のニュースがありました。鈴木敏夫プロデューサーは製作部門はこれからは東南アジアに拠点が移ると発言していますが。

 伊藤:既に東映アニメーションはフィリピンにアウトソーシングしてます。

 青山:ワンピースがそうですね。

 伊藤:別の会社はベトナムやタイに目を向けています。

 ――アニメの監督は下積みをへて監督になるように思っていたのですが、その部分が海外に行くのはどうなんでしょう。後進が育たなくなりませんか

 伊藤:今はその手段を取らなくても、ネットからうまいアニメーターが出てきてはいますね。

 青山:ピクシブからも人気のフリーのイラストレーターさんも登場してますね。そういうネット発の方が多くなった気がします。

 ――海外ドラマだと「ハウス・オブ・カード」のようにネット独自で全部話を出す形もあります。製作の余裕も少しはできるかもしれませんが

 伊藤:アニメを見る層は変わらないですね。アニメのコアユーザーはニコニコ動画の会員なってますから、そういうやり方もありです。でも制作時間はどうでしょう。日本の人は時間を与えただけ食いつぶすんで変わらないですよ。2年の時間を与えたら、最後の3か月まで何もしないですよ。2001年に公開された映画「ファイナルファンタジー」は日本のアニメーターを高給で雇って、ハワイに連れて行って完全拘束してやったんですけど、全然仕事をしなかったと聞ききました。海外はどうか分からないですけど、日本のアニメ関係者はそういう風にやってもだめです。自分を律してやれる人はいないです。仮にそうやってできる人がいても、会社が別のラインの仕事を突っ込んだりもしているので、環境的にも難しい。

 ――仕事をギリギリまでしない。うーん耳の痛い話です

 伊藤:ただ3D。ポリゴン・ピクチュアズさんは別です。だから3Dをやりたい。ポリゴン・ピクチュアズさんや、デジタル・フロンティアさんから仕事ないかなと本気で思ってます。

 ――以前、風立ちぬの鼎談をした際に「ジブリのスタッフは特殊」との話も出ました。ジブリの解体で人は移っているんですか

 伊藤:細田守監督の新作「バケモノの子」(7月11日公開予定)の美術監督3人は元ジブリの方たちですよね。動画からも何人か引き取っていると聞きました。

 伊藤監督、青山ひかる2015年の目標は?

 ――最後にそれぞれ2014年の個人的な3大ニュース

 伊藤:まずは5月に結婚しました。あとSAO2が無事に終わったこと。それに「ギーコポリス」というイベントに参加するため、パリに行かせてもらったことですね。ファンタジーとSFとサイバーパンクなどを扱うイベントで、なぜか「ジャパン」というカテゴリーがあって(笑い)。日本から行ったのはアニプレックスから2人と俺だけ。だから気楽でしたね。アメリカのイベントは太った人が多かったけど、フランスの人はスラリとしている。ゲームオブスローンズの格好をしても似合ってました。イベントも盛り上がってくれてよかった。

 ――SAOですが、また続編を頼まれたら

 伊藤:いやー、どうでしょう。終わりが見えない話の続きをやり続けるのはしんどいかなあ。イメージが完全にSAOの人になってしまいますし。ちなみに別の企画ももう走ってます。

 ――青山さんの3大ニュースは

 青山:まずは芸能界にデビューしたこと。DVDがAmazonランキング1位になったこと。それに「プロが選ぶDVD賞」の新人賞を撮ったことですね。芸能活動の見方が変わりました。2015年の目標は仕事の幅を広げること。声優だったり、実写だったり映像の仕事に関わりたいです。

 伊藤:俺の目標は慎ましく暮らすことです。嫁を怒らせない(笑い)

 ――新婚ですもんね。きょうはお2人ともありがとうございました!