「改革の旗手」の行く末は――。大相撲の横綱日馬富士(33=伊勢ヶ浜)が10月の秋巡業中に鳥取県内で幕内貴ノ岩(27=貴乃花)に暴行を加えた問題で、急展開だ。日本相撲協会は20日、東京・両国国技館で定例の評議員会を開いた。池坊保子評議員会議長(75=元文部科学副大臣)は、会見で貴ノ岩の師匠の貴乃花親方(45=元横綱)の対応に苦言。親方衆の間からも本来は被害者側であるはずの貴乃花親方に対する批判が一気に噴出しており、協会理事からの降格を求める声まで上がっている。
日馬富士の暴行騒動は評議員会の場も揺るがした。協会の尾車事業部長(60=元大関琴風)が評議員に今回の一連の騒動の経緯を報告。池坊議長は協会側に速やかな情報公開を要請した上で会見を開き「(貴乃花)巡業部長は何かあった時には、上司の(八角)理事長に報告をする義務が課せられている。速やかに報告していれば(協会として)対処のしようがあったのではないか。残念」と貴乃花親方の対応に苦言を呈した。
池坊議長は私見を述べたにすぎないとはいえ、公益法人である相撲協会の最高決議機関の評議員会トップによる発言は重い。日馬富士が貴ノ岩に暴行を加えたのは10月の秋巡業中での出来事だ。巡業部長である貴乃花親方には、監督責任と相撲協会に対する報告義務がある。それにもかかわらず、暴行発生から3日後の10月29日に貴乃花親方は協会には報告せずに鳥取県警に被害届を提出した。
その後の貴乃花親方の協会に対する“不誠実”な対応については、本紙でも報じてきた通り。角界内では親方衆を中心に貴乃花親方への批判が噴出している。「理事の資格はない。降格させるべき」(ベテラン親方)との声も上がっているほどだ。
本来であれば、あくまで貴乃花親方は被害者側の立場。今回の騒動の責任は全面的に日馬富士にあるはずだ。まして、2010年の「貴の乱」から、不祥事の続いた相撲協会の改革を目指したことで「改革の旗手」と呼ばれてきた。ファンからも高い支持を得てきたにもかかわらず、なぜここまで周囲の怒りを買ってしまっているのか。
角界関係者は「貴乃花親方のせいで、九州場所がメチャクチャになったからです」と証言した。
今回の暴行騒動が表面化した九州場所3日目の14日、相撲協会は日馬富士の師匠の伊勢ヶ浜親方(57=元横綱旭富士)と貴ノ岩の師匠の貴乃花親方を福岡国際センター内の理事室に呼び出した。その場で伊勢ヶ浜親方は貴乃花親方に深々と頭を下げて「今回のことは申し訳なかった」と謝罪した。
その上で伊勢ヶ浜親方は「もう場所が始まっている。(場所に出ている)他の力士もいることだから(争うのは)場所後にしてもらえないか」と懇願した。これを貴乃花親方は拒絶。第三者である弁護士を介入させて、法廷で争う強硬な構えを見せた。貴乃花親方が対決姿勢を鮮明に示したことで騒動は拡大。土俵そっちのけで今の大混乱に至っている。
貴乃花親方の態度の是非は別にして、角界内には本場所の土俵を最重要視する風潮がある。相撲協会も、本場所開催中は相撲以外の重要事項の発表を控えるのが通例。力士の結婚や入籍などのおめでたい話でさえ、場所中を理由に発表を控えた例もあるほどだ。ましてや場所中に不祥事の話題を広げることなど、もってのほか。貴乃花親方の行動は親方衆には協会への重大な「背信行為」と映っている。
世間的には、今回の騒動の責任の重さでいえば序列は日馬富士、次いで師匠の伊勢ヶ浜親方となる。その一方で、角界内では貴乃花親方が伊勢ヶ浜親方を追い抜き、日馬富士と並ぶ“A級戦犯”となりつつあるのだ。
この日も、貴乃花親方は報道陣の取材に無言を貫いた。角界内の目が厳しさを増すなか、貴乃花親方の真の狙いはどこにあるのか。「改革の旗手」の胸の内は計り知れない。












