課題は山積みだ。東京五輪・パラリンピック組織委員会元理事の高橋治之容疑者(78)が受託収賄容疑で逮捕された事件の波紋が広がる中、日本オリンピック委員会(JOC)の山下泰裕会長(65)は札幌市と進める2030年冬季五輪招致の継続を明言した。一方で、専門家は招致に成功したとしても大会スポンサーとなる企業との交渉が難航する可能性を指摘。実際、企業の間では〝五輪離れ〟の兆候が見え始めている。

 山下会長は30日の会見で「(汚職事件で)五輪・パラリンピック全体のイメージが損なわれてしまった」と険しい表情。それでも「自分たちにできることは透明性を確保して、同じことを繰り返さないこと。札幌招致から撤退? そういった意見は(25日の)理事会で全くなかった。私もそのつもりはない。(開催の)趣旨を理解してもらえるように、やれることを最後の最後まで全力を尽くす」と力説した。

 一方で、大会スポンサーの紳士服王手「AOKIホールディングス」が絡んだ汚職事件がスポーツ界に与えたダメージは計り知れない。ある金メダリストをサポートする企業の社長は「こうした事件があったから(アスリートの)応援をやめようとは思わない」と前置きした上で「大変残念としか言いようがない。みんなで応援したいからこそ、もっとクリーンであってほしかった」と大きなショックを受けている。今後は企業の間で〝五輪離れ〟が加速していく可能性が高い。

 スポーツ法を専門とする早大スポーツ科学学術院教授で弁護士の松本泰介氏は、仮に札幌で開催が決まっても協賛企業の獲得が課題になると指摘する。

「各社は(組織委側の)〝言い値〟に協力したと思いますが、そういうのは東京が最後のイベントだったと思うんです。企業側は『結局自分たちが払った〇億円はどうなったんだ?』と思うでしょうし、そこは(組織委側が)説明するというスタンスを示さないとスポンサーからお金を集めるのは難しいかもしれませんね」

 昨年の東京大会には国内スポンサー68社が集まった。夏季と冬季では大会規模が異なるとはいえ、負のイメージを払拭できなければ〝激減〟は避けられない。同市は1972年札幌五輪の会場にもなった月寒体育館の建て替えに税金を投入し、その他は運営費も含めてスポンサー料を頼りにしているが…。招致に成功してもカネが集まらない、では話にならない。