桃田が事故後初の会見 九死に一生も「亡くなった方がいるのでラッキーとは思わない」

2020年03月06日 18時20分

会見で笑顔を見せる桃田

 1月に遠征先のマレーシアで交通事故に巻き込まれて大ケガを負い、先月末から練習を再開していたバドミントン世界ランキング1位・桃田賢斗(25=NTT東日本)が6日、都内で事故後初めての会見を行い、その胸中を語った。

 突然の悪夢から約2か月、スーツ姿で報道陣の前に現れた桃田はやや緊張の面持ち。マイクを握ると「復帰に当たって、たくさんのサポートと激励の言葉をいただき、感謝の気持ちを伝えたく、このような場を設けさせてもらいました」と自ら志願して会見を開いたことを語った。

 東京五輪金メダル大本命として注目される桃田が事故に見舞われたのは1月13日。マレーシアの首都クアラルンプールで乗車していたワゴン車がトラックに追突。運転手が死亡する大事故となり、桃田は顔面3か所に裂傷を負った。事故の瞬間、車内で眠っていたという桃田は「衝撃で起きた。何が起きた分からなくて混乱していた。当時の感情はあまり覚えてない」と振り返った。同乗者も全身打撲など大けがを負った中で命に別状はなかったが「亡くなった方がいるので、ラッキーと思ったことは一度もない」と話し、死亡した運転手へ追悼の意を述べることも忘れなかった。

 マレーシアから帰国後、国内で精密検査を受けて一度は「異状なし」と診断された。だが、2月4日に日本代表合宿に参加すると、練習中に「シャトルが二重に見える」と訴えて再検査を受けると「右眼窩(がんか)底骨折」が発覚。同8日に手術を受け、その後は順調に回復し、同29日のチーム練習に復帰していた。

 紆余曲折を経て復帰に至ったが、メンタルが衰弱した時期もあったという。

「すごくボロボロな状態で不安だった。また動けるか、またバドミントンできる体に戻るか、手術がうまくいかなかったらどうしよう、とネガティブな感情が出て、諦めそうになったこともある」

 そんな時、かつて訪問した小学校の生徒からの手紙や尊敬するスポーツ選手からのメッセージをもらい、さらに全国のファンからの激励で力をもらったことで桃田にある“変化”が生まれた。

「心が折れそうになったけど、たくさんの方から激励の言葉をいただき、今まで東京五輪は(今後の)延長の大会でしたが、今は東京五輪で金メダルを狙っていきたい思う」

 これまで自ら進んで言ってこなかった「金メダル」をハッキリを口に出した。復帰戦は5月16日開幕のトマス杯(デンマーク)が濃厚。五輪選考レース(4月26日まで)でポイント独走中の桃田は残り全試合を欠場しても出場は確実だ。「今は羽根を打つのが楽しいし、充実している」と語る桃田だが、課題もある。「自分はコートに立つとどうしても動きたくなるのでセーブすることが課題。すぐに試合に出たい気持ちもあるけど、余裕をもって、今まで以上に強くなるためにも焦らずに」と自分に言い聞かせた。

 最後に桃田はハッキリした口調でこう語った。

「今回はすごい経験をした。この経験で自分が伝えられることがたくさんあるし、責任もある。すべてを受け止め、自分の力に変えられるようなスケールの大きな選手になってコートに戻りたい」

 五輪まで残り5か月。“悲運のエース”はどんな復活劇を見せるか。