10月2日に歓楽街のある東京・新宿区歌舞伎町で、飛び降り自殺した女性が通行人に激突した事故後、現場周辺では同様の自殺が相次いでいる。未遂を含むと、10月だけで少なくとも飛び降り自殺を図った人が8人いたことが本紙の取材で判明した。欲望渦巻く歌舞伎町でも、こんなに多数の不幸を生んだことはなかった。

 2日の激突事故は午後7時ごろ、歌舞伎町にある雑居ビルで発生。8階の外階段の踊り場から、都内在住の20代女性が飛び降り、真下の路上を歩いていた男性に激突した。

 警察や消防が駆けつけ、2人は病院に搬送されたが、女性は死亡。通行人の男性は右腕骨折の重傷を負った。階段の踊り場からは、自殺した女性のものとみられるハイヒールやカバンが押収された。

 女性の知人は「ホストクラブの支払いで切羽詰まっていた。この業界の10月は客が減る閑散期。だから支払う能力のない客にも、金を前借りさせて店に呼ぶホストもいる」と明かした。

 また、現場周辺で働く男性は「事故の2日後には、別のビルで女性が自殺未遂をした。10代で警察に保護されたとか。自殺を図って生還した人もいれば、飛び降りで地面に強く全身を打ちつけられて、命を落とした人もいる」と話す。

 飛び降り自殺が起こるたびに、現場に通行人などやじ馬が集まる。救助活動の様子を撮影すると、SNS上に投稿。10月の歌舞伎町ではその数が8人に上ることが、そうした投稿や、消防、警察、目撃者への取材から浮上した。

 ある現場で自殺の一部始終を目撃した男性は「若い女性が叫んでビルの屋上に立つと、道にいるやじ馬があおっていた。まるで地獄絵図のようだった」と振り返る。また、別の日に自殺した女性を知る男性は「貢いだホストに、体の関係を迫っても寝てくれなかったとかで、精神的に病んでいた。それとは別に27日には男性も飛び降りた」と明かした。

 現場周辺で働く男性は「物騒な街だし、これまでも事件事故などで死亡者は出ていたが、今年の10月は本当に自殺騒ぎが多かった」と語った。

 2日の自殺と巻き込み事故が大きく報道されたのが影響したのかもしれない。

 歌舞伎町事情通は「格差社会で一部の金持ちだけが肥大しているが、その人たちがみんな歌舞伎町に来るわけではない。薄く広くの人が儲かる社会でこそ、歌舞伎町は潤うんです。水商売が不景気になっている上に、閑散期が重なったのも原因でしょう」と指摘している。