歩く瞑想で不安スッキリ ポジティブに生きよう! NY在住の禅僧・松原正樹氏に聞く〝心の整理術〟

2022年07月03日 10時00分

ニューヨーク在住の禅僧・松原正樹氏
ニューヨーク在住の禅僧・松原正樹氏

 仏教の考え方では心配ごとや悩みごとは至極あたり前のこと、瞑想をすれば心がスッキリするという。「心配ごとや不安が消える『心の整理術』を1冊にまとめてみた」(アスコム)の著者で、ニューヨーク在住の禅僧・松原正樹氏に、仕事の合間にもできるオススメの瞑想やポジティブになるための考え方を教えてもらおう。

【不安の正体とは】

 年齢に関係なく仕事のこと、給料のこと、健康のことなど、現実的な問題をみんな心配しています。極論、どんなに考えても、どんなに悩んでも、なるようにしかならないのが人生というか、一番大事なのは、とりあえず今、自分ができるベストなことをすることだと思うのです。

 コロナ禍で、皆さん様々な心配ごとや不安を抱えていると思います。でも、もしかしたら、まだ起こってもいないことを心配したり、「こうなったらどうしよう」と悩むこと自体に悩んでいるという人が多いのではないでしょうか。

 私たちを不安にさせているのは何なのかについてお話ししましょう。不安にさせる思考や感情そのものが不安の種ではないのです。仏教的に言えば、ただそういった負の感情があるだけ。そして、その負の感情に執着してしまうこと、これこそが不安のもとなのです。

「こうなったらどうしよう」「自分の仕事にも影響があるかもしれない」「周りの人の迷惑になるかも」などと考えていくと、心配ごとや負の感情のスパイラルにどんどん入っていってしまいます。でも、よく考えてみると、「これが起こったらどうしよう」と不安に思っていることは、実際にはまだ起こっていませんよね。そのまだ起こっていないことに自分が執着してしまっている状態です。その執着が悩みの根源となるのです。
 天気に例えて考えてみましょう。ずっと晴れが続いていたのに突然大雨が降ってきたとします。その時、「なんで雨が降るんだよ」と怒る人もいます。でも、雨自体は決して悪いものではありませんよね。雨に対する自分自身の執着、判断、比較、価値観がその日の雨に対する負の感情をわざわざ湧き起こしているのです。

【負の感情を手放す】

 私たちは人間ですから、生きていれば心配ごとや悩みは次から次へとどんどん湧き出てきますし、それに執着すればするほど大きく膨らんでいきます。いつかはその心配ごとや悩みは必ず自然と消えるものです。にもかかわらず、「この状態が永遠に続くのではないか?」「自分はここから逃げられないのではないか?」「このトンネルに出口はないのではないか?」と思ってしまう、これが負の感情のスパイラルです。

 明けない夜がないように、終わりのない心配ごとや負の感情はありません。負の感情が湧き上がってくること自体をコントロールすることはなかなか難しい。でも、たとえそれができなくても、負の感情をあっさり手放すというかたちならば、私たちにもコントロールしていくことができるようになります。

 大切なのは、昔のことやこれからのことなどについてあまり難しく考えないこと。今できるベストは何かを考え、今をハッピーにするように自分を促していきましょう。そのためには、ものの「ありのまま」を肯定する「心の筋トレ」をして、「心の免疫力」を鍛える必要があるのです。

【「今」に心を向ける】

 世の中はなんでも移り変わっていきます。仏教用語に「無常」という言葉があり、「常なし」とか「常あらず」と言われます。私たちは常に変化している世界(言い換えれば、「ing型」の進行形の世界観)の中に住んでいるわけで、その現実をポジティブに受け入れていくことが一番大切だと思っています。移り変わっていくからこそ次に進めるし、たとえ今が苦しくても必ず抜け出すことができるのです。

 今、あなたが抱えている悩みも時間がたつにつれて変わっていきます。変わらない悩みごとや心配ごとはありません。だからこそ、今ある悩みごとに対してこれも常に変わっていく、必ずゴールがあるというふうに受け入れることが大切です。自分の置かれた状況や今の自分に対してくよくよするのではなく、広い視野を持ってポジティブに考えていきましょう。

【瞑想でスッキリ!仕事場や歩きながらでも】

 ランチのあとに5分間だけでも結構です。自分の席に着いて、目を閉じて、深呼吸して瞑想するのも、心を落ち着かせる効果があります。誰でも一人になりたいときってありますよね。パーソナルスペースが確保されているほうが、人は落ち着くものです。

 私がオススメしたいのが、ランチの時間を使って外に出て散歩をすること。散歩は“歩く瞑想”です。一人になれますし、公園のベンチに座って深呼吸したり、芝生に座ったりすると気分もリフレッシュします。もし外に出るのが難しければ、会社の中を歩くだけでも気持ちがスッキリしますよ。

【音に集中する瞑想】

 頭の中でいろいろ考えてしまうときは、音楽を聴くのがオススメです。音楽は感じるものです。考える必要はありません。音楽を聴くと落ち着いたり、いい気持ちになったりしますよね。旅行に行って「わあ、いい景色だなあ」とか、おいしいものを食べて「おいしいなあ」と感じることも、音楽を聴くのと同じ効果があります。

 感性にポジティブに響くことは、心配ごとや負の感情を手放したり、心を落ち着かせたりするのに、とても効果的な良い方法です。

【悩みごとやストレスの内容は世界共通】

 私は米グーグル本社でマインドフルネスの講義を行ったり、コーネル大学で学生のメンタルケアに関する授業を行っていましたが、皆さんの悩みは日本人と同じです。

「勉強が忙しくて寝られていない」とか、「成績が悪かったらどうしよう」とか、「仕事に就けなかったらどうしよう」とか、「リストラされたらどうしよう」とか、「ワークライフバランスが崩れている」とか、不安や悩みは万国共通。アメリカ人だから特別な感性を持ってポジティブなんじゃないかとか考えがちですが、そんなことはないです。

 ☆まつばら・まさき ニューヨーク在住。千葉・富津市の臨済宗妙心寺派佛母寺住職。アメリカと日本を行き来しながら禅とマインドフルネスの橋渡し的存在として活動している。

関連タグ: