本当に21日で4都県の緊急事態宣言を解除できるのか!? 東京都の12日の新型コロナウイルス新規感染者数は304人で、先週の金曜日と比べて3人増えた。これで4日連続で前の週の同じ曜日を上回った。1月から続く緊急事態宣言の自粛疲れで、街を歩けば人、人、人の波。かねてリバウンドが懸念されていたが、ここにきていよいよ現実味を帯びてきている。

 やっぱり2週間じゃ短かった――。

 そんな嘆き節が政府から聞こえてきそうだが、8日から2週間の再々延長に突入している埼玉、東京、千葉、神奈川の4都県は、日々の新規感染者数が明らかに下げ止まり、東京は今週1週間の新規感染者数が9~12日まで4日連続で増加。もはや、下げ止まって横ばいどころか、底を打って増え始めている状態だ。

 7日で解除された愛知、大阪、福岡なども、新規感染者数が完全に横ばい状態に。北海道に至っては3日から毎日前の週の同じ曜日を上回りっぱなしで、第4波の足音が確実に背後まで迫ってきている状態だ。

 当初から2週間の延長では「短すぎるのではないか?」という声が、専門家のみならず国民からも上がっていたが、現状を見て21日での4都県の解除は可能なのか? 医学博士で防災危機管理アドバイザーの古本尚樹氏はこう話す。

「現状を見ると、21日での解除はできないと言わざるを得ない。そもそも3~4月は人が一番動く季節。感染予防対策だけでは効果は限定的で、減らすよりもこれ以上増やさないので精一杯でしょう。本来はワクチンと感染予防対策の併用で高い効果を期待できたが、国内でのワクチン接種が先進国の中で一番遅くなって後手に回ってしまったことで、もくろみは外れた。ほかの先進国並みに年明けから接種できていたら違ったのでは?」

 最近の“リバウンド傾向”は、緊急事態宣言が長期に及んでいることも一因だろう。年末年始に比べれば2月末時点で全国的に感染者数を大きく減らすことに成功したが、その時点で下げ幅が鈍化していたにもかかわらず、これといった策を講じないまま4都県で8日から2週間の延長を決定。4都県の人々は1月7日から2か月以上も緊急事態宣言が続いている状態で我慢が限界に達したのか、新宿や渋谷、表参道を歩けば、今が緊急事態宣言中とは思えないほど人混みができている。

 さらに、ここにきて来週には桜が開花。ますます人混みは増えるばかりで、クラスターの発生も懸念される状況だ。古本氏は「何としても第4波は避けなければいけない。ここに来てウイルスの主流は感染率が高い変異株に変わってきている。間もなく変異株が支配的になるでしょう。そうなれば今、供給されているワクチンの効果が限定的になってしまい、思ったような抑え込みができなくなる」と警鐘を鳴らす。

 実際、厚生労働省は12日、2月にフィリピンから成田空港に到着した男性が、新たなタイプの変異株に感染していたと発表した。日本政府が主に監視対象とする英国、南アフリカ、ブラジル由来の変異株と同程度の脅威があるとみている。

 そんな中、政府が発令する緊急事態宣言の“威光”は完全に消え去り、4都県では平時と変わらない人出だ。特に春休みを迎えた大学生が新宿や渋谷の街にあふれ、時短営業する一部の飲食店が真っ昼間から、都の迷惑防止条例を破って客引きすることが常態化している。

「政府は怖くて緊急事態宣言を解除できないのではないか? 解除後に感染者が増えれば必ず責められる。また、解除してこれ以上、国民が緩むのを避けたい思いも強いはず。積極的ではないが、仕方なしに緊急事態宣言をエンドレスで続けるしかないかもしれない」(古本氏)

 政府の運用のまずさもあって、もはや緊急事態宣言の効力は地に落ちた。一方、経済界からは「早く解除しろ!」との声が飛ぶはず。菅政権は八方ふさがりの状態に追い込まれつつあるのかもしれない。