宣言解除でも厳しい現実が待ち受けている。新型コロナウイルス感染拡大に伴う緊急事態宣言が14日、東京、大阪など8都道府県を除く39県で解除された。休業要請が出ていた各業界は独自のガイドラインを作成し、一部は既に営業を再開。業界も各組合、団体が乱立しており、“ローカル・ルール”ともいえる独自の感染防止策を打ち出している。

 緊急事態宣言の解除は39県で、特定警戒都道府県では北海道、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、京都府、大阪府、兵庫県の解除は見送られた。1週間後をメドに再検討されるが、いずれの地域も感染者数は減少傾向にあり、徐々にトンネルの出口が見えてきた。

 解除に当たって、安倍晋三首相は「80を超える業界ごとに、感染予防のためのガイドラインが策定された。消費者の皆様が安心して利用できるための指針」と話し、各業界がそれぞれで発表し始めている。

 マスクの着用、手洗い・手指の消毒の徹底、従業員の健康管理などは最低ラインとして各業種で共通しているが、組合、団体によってはこれらにプラスして、業態に応じた特有の対策を掲げている。

 コロナ禍で結婚式の延期を余儀なくされたカップルは多い。公益社団法人日本ブライダル文化振興協会が作成したガイドラインでは「披露宴会場は、できるだけ広めの会場を手配し、席の間隔は十分(1メートル以上、可能なら2メートル)空ける」「大声を発する余興等については控えてもらう」「スナップ写真を撮影する際には、密集となることのないポーズとする」などを挙げた。

 結婚予定カップルが待ち望む挙式。だが、絶叫系のフォークソング弾き語りは封じられ、新郎新婦との記念写真もソーシャルディスタンスを取り、新郎の胴上げはなしで、列席者および式場の従業員はマスクを着用した中での緊張感あふれたセレモニーになりそうだ。

 一部店舗が休業要請に応じず、物議を醸したパチンコ店も大手を振って再開するため、厳しいガイドラインを作成した。 山梨県遊技業協同組合は、客の手指や空いた台の消毒、1台おきでの利用を徹底させた上で、問題となった県外越境者対策のために入店時に身分証等を確認し、県外在住者の入店は拒否する厳しい姿勢を見せた。既に12日から営業再開している。

「パチンカー同士は打ちたい心理が分かるから、ヨソから来ても気にしないけど、店の付近の住人たちの反応は気がかり」とは、ある愛好家。トラブルが発生しなければいいが…。

 3密が避けられないナイトクラブやバーなど夜の店は引き続き、休業・自粛を余儀なくされているところが大半だが、一般社団法人日本水商売協会は自粛終了後を見据え、いち早く独自のガイドラインを示している。その内容は衝撃的だ。

「必ずやること」としてマスク着用を掲げ、飲み物を飲む時以外は外さないこととして、カラオケ時も要着用だ。

 さらに「できればやること」として、客とキャスト(ホステス、ホスト、ママ)がそれぞれ接触する相手をできるだけ減らすために「チェンジなしの固定」を掲げた。

 お気に入りのキャストを独占できるのはいいが、さまざまなキャストと触れ合いたいフリー派やチェンジ派には悲報か。

「マスクしたままのカラオケなんて、誰も歌わないでしょう。それに人気の女の子がず~っと同じ席にいるんじゃ、なんだかなぁ」(キャバクラ常連客)

 また、キャバクラ幹部は「従来は、他の客の席に指名しているキャバ嬢を取られるのが悔しくて、客の嫉妬心による競い合いで売り上げが伸びていたのに、ある程度の客がキャバ嬢を独占できるとなると飽きちゃうのではないでしょうか。チェンジなしは競争原理が働きませんから、キャストも堕落し、客も離れます。まあ、『できればやること』という緩いものですが」と指摘する。

 それでもまずは営業再開しなければ、店が潰れてしまうかもしれない。

 しばらくは各業界が設定したガイドラインに従い、コロナ禍が終息した後、さまざまな縛りが全面解除される日を待ち望むしかない。