【カタール・ドーハ7日(日本時間8日)発】日本の至宝が崖っ縁の森保ジャパンを救った。日本代表はカタールW杯アジア最終予選の中国戦で1―0と勝利。同予選初白星を手にし、解任危機に直面していた森保一監督(53)は首の皮一枚つながった。スタメンに抜てきされたMF久保建英(20=マジョルカ)が不振だった攻撃陣をまとめ上げる大活躍。“日本のイニエスタ”として進化を遂げており、今後はチームの顔として日本を7大会連続のW杯出場に導く。

 初戦オマーン戦(2日)に完敗し、10番のMF南野拓実(リバプール)も負傷離脱。そんな大ピンチを救ったのが久保だ。トップ下で先発に抜てきされると、前半23分に得意のドリブルから放った強烈なシュートがポストを直撃。38分にも豪快なミドルシュートから決定機をつくるなど攻撃にリズムをもたらした。

 久保を中心とした攻撃で中国を揺さぶった日本は、40分にMF伊東純也(ゲンク)からのクロスに合わせたFW大迫勇也(神戸)のゴールで先制した。リードした後も久保は後半17分に伊東からのパスに絶妙なタイミングで抜け出してビッグチャンスをつくるなど積極的に攻撃をけん引。難敵を破った日本は見事にアウェー(中立地開催)で勝ち点3を手にした。

 森保監督は久保の先発起用を「こちらに来てトレーニングで良い状態を確認できて起用した。大迫を軸としたときに良いコンビネーションができる」と説明。久保の登用が見事にハマった。

 指揮官は最終予選で開幕から格下相手に連敗を喫すれば進退問題への発展は避けられず、引き分け以下でも窮地に陥るところだったが、ひとまず危機を乗り越えた。攻撃の中心としてチームの危機を救った久保は、今後日本代表の“王様”となりそうだ。

 久保がJ1FC東京に所属した時代の先輩にあたる元日本代表の石川直宏クラブコミュニケーターは「いろんな経験をして、技術に加えて周りとの関係性を築けるところは本当に大きく成長した。周りをうまく使える、引き出せる選手になった」と攻撃の柱となる司令塔としての能力に磨きがかかったと指摘する。

 そして「日本人で海外でプレーする選手は増えているけど、周りの選手を引き上げる、周りの評価を飛躍的に上げるようなことができる選手は本当に少ない。建英とやっていると、なんかスムーズに動けちゃうんだよねというところ。そういう力は(MFアンドレス)イニエスタ(神戸)が特に思い浮かぶ」。スペイン代表や名門バルセロナで攻撃の中心として黄金時代を築いたレジェンドを久保は以前から尊敬しているが、そんな憧れの存在に匹敵する能力を着実に身につけつつあるというわけだ。

「それが彼の真価」と石川氏が指摘するように、久保の類いまれなる特長は個性派揃いの代表戦士たちの実力を存分に引き出し、チーム全体を活性化させる。最終予選の大一番でその才能を証明したことで、今後は至宝に森保ジャパンのリーダーとしての期待が高まる。