パンがおいしく焼けるトースターが売れている。様々な工夫がなされた製品が次々に登場しており、従来品との“焼き上がり差”に多くの人が感動しているのだ。家電プロレビュアーの石井和美さんに教えてもらおう。

 昨年から続くコロナ禍もあり、「日常生活を充実させたい」「いつも食べているものをよりおいしく食べたい」と、パン焼きに特化したトースターが人気です。

 その先駆けはバルミューダさんのスチームトースター。スチーム技術と温度制御により、まるで窯から出したばかりのような焼き立ての味を再現し、これがバカ売れしました。2万を超える、トースターにしては高い価格設定だったため、業界内でも「売れるのか?」と懐疑的な見方もあったのですが、大ヒット。バルミューダさんのトースターで作ったチーズトーストは、スチームの力でチーズの風味を生かし、感動のおいしさです。

 これを契機に各メーカーが高級スチームトースターを売り出すことになり、一大ムーブメントとなりました。最近では、昔はやった(焼けたらパンが飛び出す)ポップアップトースターなどにも注目が集まっていますが、構造としては大まかに2つに分けられます。水分を入れることでふっくら焼く前述のスチームタイプと、高温で素早く焼くことでパン内部の水分を逃さずにカリッ、サクッと焼くタイプです。どちらの食感が好みか、またパン以外の調理もしたいなど用途に合わせて選んでいただければと思います。

 いずれにせよ、おいしいパンは朝から幸福な気分にさせてくれますよ。お試しください。

【忙しい朝に大活躍】このトースターでパンを焼くために必要な時間は90秒。商品名通り“すばやく”おいしいパンを焼けるのが最大の特長です。

 高出力のカーボンヒーターに、温度を一定に保つためのコンベクションファンなどを設置。庫内を短い時間で均等に高温度にすることに成功しました。表面を一気に焼き上げ、内側に含まれた水分を逃すことなく、表面はサクサク、中はモチモチのおいしい食パンが短時間で出来上がる仕組みになっています。

 オートメニューも多数用意されていて、たとえば「厚切りトースト」や「クロワッサン」など、パンの種類によってセットすれば、トースターが自動で温度制御してくれて最適な焼き加減を提供。短時間で高温になる仕組みを生かして、焼き芋なども楽しめます。ダイヤル式で操作も簡単、「温度・時間・メニュー」の表示が大きく見やすいのもうれしいところです。◆シロカ「シロカのすばやきトースター」(1万7800円)

【あの悩みが解消】オーブントースターの悩みといえば、庫内の温度調節の難しさ。グラタンの上はしっかり焦げ目がついたのに内部は冷たいままだった…といった“オーブントースターあるある”は、誰でも経験がおありかもしれません(苦笑)。

 その点、ビタントニオさんのオーブントースターは上下のヒーターでそれぞれ別の温度設定が可能なところが画期的です。たとえば、まずパン焼きに関しては上下とも強火に設定することで最大1200Wの高温環境を実現。食パン内部の水分を閉じ込め、“カリッ、サクッ”の食感を楽しめます。

 一方、ピザやグラタンなど内部までしっかり温めたい料理は下の方が強い「中火」の設定で、調理済みのフライなどは上下ともに「中弱火」に設定することで、焦げることなく、最適の食べごろにしてくれます。食パンを焼く以外にも調理に幅広く活用できますよ。◆ビタントニオ「オーブントースター VOT―30」(想定価格=6578円)

【ネーミングだけではない秀逸さ】まずネーミングと情熱価格さんならではのコスパの良さに目がいきますが、どうしてどうして、しっかり造られています。

 パンに水分を含ませるために水を入れるスチームトースター方式ではなく、陶器製のプレートを下部に設置したことがポイントです。これを水にひたすことでスチームが発生、外側サクサク、内側もっちりのおいしいパンが焼ける仕組みになっています。

 注文をつけるとするならば、下部の温度が下がってしまうのか、トーストの裏側部分はうまく焦げ目がつかず、色がつきづらいことがあります。とはいえ、「某高級スチームトースターと比べたら」という程度ですから、もちろん十分おいしいです。水分を残すことでパンの甘味もしっかり感じることができ、耳までふんわり食べられますよ。コンパクトなので単身家庭などでも使い勝手がいいと思います。◆情熱価格(ドン・キホーテ)「ザ・陶スター」(3278円)

 ☆いしい・かずみ 家電プロレビュアー。家電レビュー歴15年以上。茨城県に家電をレビューするための一戸建て「家電ラボ」を開設、冷蔵庫や洗濯機などの大物家電のテストも行う。実際に製品を使用した上での的確なコメントに定評あり。