プロレス界の「黒いカリスマ」こと蝶野正洋(58=東スポグループ強化部長)が、渦中の白井一行球審(44)に“黒い援護射撃”だ。24日のオリックス戦(京セラ)で判定に不服そうな態度を取ったロッテ・佐々木朗希投手(20)に詰め寄った白井球審の行動に賛否が集まる中、蝶野は昨今のスポーツ界の問題点を指摘。“ビンタの名手”として、アカデミー賞授賞式で俳優ウィル・スミスがプレゼンターのクリス・ロックに起こした「平手打ち騒動」も徹底解剖した。

 ガァァッデム! 蝶野だ。判定に対する佐々木投手の不服そうな態度に白井球審が詰め寄った件で、いろいろな意見が出てるな。俺はあれ、いいじゃんって思ったけどね。レフェリー、審判は強いほうがいいんだよ。

 最近はだんだん威厳がなくなってきてるけど、彼らってやっぱり指揮官だから。そこは権限を持たせて、プロ野球も興行の一つだし、いい試合にするためには審判が絶対に入ってると思う。プロレスがそうだもん。

 俺が海外遠征でドイツに行ったときは、ヨーロッパ(の試合)ってラウンド制で、休憩の時に客からおひねりみたいなのがあった。どういう分け方するのかなって控室に戻ったら、レフェリーも入れて対戦相手と3人で分けるのよ。それくらい彼らってポイントがすごく高いんだ。

 今のスポーツ界って競技者の主張が強くなりすぎてるから、そこは審判がもう一回、ガツンと言ったほうがいい。彼らがいないと試合は成り立たないんだから。見る側も目が肥えてるからみんな好き勝手言うけど、その上の存在が審判。選手の態度が悪かったら、厳正にペナルティー与えて当然だと思うよ。…さんざんレフェリーのブラインドで悪さしてきた俺が言うのも妙な話だけどな。

 白井球審が大人げないみたいな意見もあるけど、俺は逆だな。佐々木選手はいい選手だけど、これから大リーグとかに行った時に一流プレーヤーとして喜怒哀楽を出さないようにしないといけない。

 どんな逸材であれ、20歳の若手が大人のプロ野球の場で40代の先輩をあざ笑うなんて、こんな無礼なことはない。「アスリートファースト」が浸透してきてるけど、その前に基本は「ルールファースト」なんだと思う。特に日本は今、レフェリーが軽視されてる。お客と選手の間でルールをつくってしまってるようにも見えるよな。

 あと(ボクシング元世界ヘビー級統一王者)マイク・タイソンが酔っ払いに航空機内で絡まれて殴っちゃったのが話題になったけど、飛行機で酒飲んだヤツのトラブルって、飲んでない人からすると本当迷惑な話だよね。ただ暴行はやっぱりよくないから…タイソンはグーでなくビンタでよかったと思う。拳になったから凶器になってしまったわけで。

 ビンタっていえば最近はアカデミー賞の席でのウィル・スミスだけど、米国でビンタってあんまり見ないよな。怒りの表現の一つであって、ケンカではないんだ。ただ平手が見えない状態で、下からいきなりいったから暴力になってしまった。(トランペット奏者)日野皓正と一緒だよ(※)。あの時も「ビンタの名手」とか言われて取材がきたけど、俺はビンタの専門家じゃないっての。

 俺が(月亭)方正君にいくときは、ちゃんと胸ぐらつかんで「いいか、いくぞ! 覚悟しろよ!」と。「すみませんでした」と謝らせてからっていう流れだけど、ウィル・スミスや日野皓正はいきなりバチンっていってるからもう暴力だよね。グーはダメ、不意打ちはダメ、ちゃんと分かるように構えてからいくのが正しいビンタ。…まあ、こんなこと知っててもあんまり意味ないがな。

 ただ、ウィル・スミスがやった後に振り返ってニタッと笑ってるし、もしかしたらお互いあの場でスキャンダラスなことしてやろう、盛り上げてやろうくらいの「あうんの呼吸」は多少あったんじゃないの? だって普通、あんなことがあったら帰るよ。何で俺がこんなとこにいなきゃいけねえんだって。俺だって、ビンタ終わったらいつも舞台降りるもん。え、一緒にしちゃダメだって? よしお前、歯を食いしばれ! いくぞ!

 ※ 2017年8月、世界的なトランペット奏者の日野皓正がコンサートでドラムを叩き続けた中学生を往復ビンタして、大問題になった。