北海道のコロナ惨状「行政災害だ」 札幌在住の専門家が怒りの指摘

2021年05月15日 11時30分

5日のマラソンテスト大会を視察した橋本聖子会長(ロイター)

 政府は14日、北海道、岡山、広島を新型コロナウイルス特別措置法に基づく緊急事態宣言の対象地域に追加すると決定したが、現地はすでに感染爆発の状況にあり、宣言は遅きに失した感もある。札幌市在住の専門家は原因について菅義偉首相(72)に寄り添いすぎた首長による「行政災害だ」と指摘し、北海道の惨状を明かした。

 政府は当初、群馬、石川、岡山、広島、熊本の5県にまん延防止等重点措置を追加適用すると分科会に諮ったが、メンバーから「北海道、岡山、広島を緊急事態宣言の対象にすべき」との意見がなされた。

 菅首相は13日、北海道の鈴木直道知事から札幌市を対象とする緊急事態宣言発令の要望に対し慎重な姿勢を示したばかりだったが、分科会から強い対策を求められ、一夜で方針を一変。北海道、岡山、広島の3道県を緊急事態宣言の対象地域に追加すると決めた。期間は16日から31日まで。

 政府の諮問が分科会の意見で大きく変更されたのは初めてだ。菅首相は「比較的人口規模が大きい北海道、岡山、広島において新規感染者が極めて速いスピードで増加している。これまで地元自治体と対策を進めてきたが、専門家の方からより厳しい対応が必要との考えが示された。政府としても、今が感染を食い止める大事な時期という考えに変わりはなく、専門家のご意見を尊重し、追加の判断をした」と説明した。

 医学博士で防災・危機管理アドバイザーの古本尚樹氏は「もっと早くに出すべきで遅きに失した。あと、まん防はもういらない。効果の検証すらできていないし、出すなら緊急事態宣言」とバッサリ斬った。

 古本氏は今回、宣言発令が決まった北海道札幌市在住だ。「現地では、だいぶ前から感染の傾きが増えていたので、市民レベルでも『何でこの状態で緊急事態ではなく、まん防なんだろう』という話は出ていた」と言い、感染拡大が続く状況に陥った原因を鈴木知事による「行政災害だ」と主張する。

「地方自治体というのは地域の現状、課題を中央に反映させるのが役割だが、鈴木知事は菅首相に寄りすぎている。第1波の時は積極的にコロナ対策をしたと名を上げましたが、今は真逆で菅首相の二番煎じの“出がらしのお茶”状態。今の道民の意見は『何でこんなに対策が遅いんだ』という人が多いと思う」(同)

 古本氏によると、札幌市以外の地域医療は旧態依然としており医師、施設、財源不足の三重苦にあえいでいるところがほとんど。コロナで重症化した場合に対応できるような医療施設は、札幌や旭川などの拠点都市に集中しているという。

「過疎地域でコロナになった場合、高規格の医療施設には簡単にアクセスできない。しかも、高齢者が多い。なぜ全道域ではなく、札幌市だけに緊急事態宣言を要請とか、おかしな判断になるのか。夕張市長をやっていたのに過疎地の地域医療を考慮しないのがまったく理解できないし、道民軽視と言われてもしょうがない」

 鈴木知事の対策の遅れの背景については「全道に宣言を出すと、企業への休業の支給金が大きくなる。国が8割を負担するのでプレッシャーはあったと思う。あとは五輪との兼ね合い。札幌でマラソンが行われることもあり、印象を考慮したのだろう」と指摘。その上で「菅首相に追随すると感染拡大する構図。コロナの感染対策と地域医療の両方がずたずたになり、置き去りにされるのは地域の住民。何も北海道に限った話ではなく、どこでも起こりうる話だ」と語った。

 感染が収まらない状況でも、菅首相は五輪開催に意欲的だが、古本氏は「ワクチンを早く打てるかどうか。打てないなら人との接触を避けなきゃならないのだが、どちらもできてない。方向性の見えないドロ沼の状態に入り込んでいる」と現状分析した。

 最後に五輪の開催について「5日のマラソンのテスト大会でも観客が密になった。現状では無理だと思う」との考えを示した。

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