俳優の柏原収史(38)が、劇団「タタカッテシネ」の舞台「燈火の中、貴方を想ふ」(12月6~10日、東京・劇場HOPE)で演出家デビューを飾る。兄の崇(40)に続いて芸能界にデビューして24年。後進の育成に励むのには、ある恩人の存在があった。

 都内の稽古場には女性アイドルたちを粘り強く指導する柏原の姿があった。「僕の経験上、芝居は最初がつまらないとその後、興味がなくなる。でも、彼女たちがアイドルを卒業した後の芸能人生において、芝居スキルは不可欠。ならば、できるだけ楽しく教えたい」と説明する柏原。その裏には自身の苦い経験があった。

「14歳でデビューし、何もわからないまま現場に行っていた。どの現場でも毎日、きつい言葉で怒られ続けて自信を喪失し、自分は俳優に向いていないと考えていた」という。そんな中、19歳で兄と組んだバンドでメジャーデビューが決まった。

「俺はロッカーだとイキがって、事務所に断りなく金髪に染めた。ところが、マネジャーは怒るでもなく、故黒木和雄監督のもとに連れて行ってくれた。僕は『髪の毛、黒くできないですよ』と生意気な態度をとったが、監督は終始ニコニコして『君はそのままでいい』とおっしゃった」という。

 ところが、出演した映画「スリ」は映画批評家大賞を受賞。柏原は「楽屋ではしゃいでセリフは適当にしゃべったのに大変な賞を頂き面食らった。芝居は考えすぎてはダメ。自己満足より観客の受け取り方がすべてと理解した」と語った。

 この経験が柏原を変えて「生意気な僕を使ってくださった故黒木監督、そして監督に引き合わせてくれた天国のマネジャーの恩に報いたい。死ぬまで芝居に携わって、伝えられることは伝えたい」と決意を語った。