言葉にできないモノを撮りたかった――三島有紀子監督(57)が満を持して映画化した「男ともだち」(原作・千早茜)。人生に行き詰まったイラストレーター・神名を松岡茉優(31)、その〝男ともだち〟ハセオを成田凌(32)が演じる。11月6日の全国公開を前に、三島監督が名古屋の伏見ミリオン座で取材に応じ、2人を選んだ理由についてヒントをくれた。

 学生時代の出会いから12年、一度も恋人同士ではなかった。それなのに失いたくないという互いの独特な距離感。クリエイターとしての神名の孤独感も含め、「セリフや仕草でどのように表現してくれるのか。任せられるのは松岡さんしかいない。5枚に及ぶ手紙を書いてくどきにいきました」と、三島監督は話す。イラストレーターとして松岡が描くシーンは見どころのひとつだが、筆やコンテの使い方、水彩画の描き方を学ぶために、画家・田中千智のアトリエに通ったという。

 一方、成田については「非常にしなやかな表現者」だという。ハセオの魅力のひとつである包容力について、成田の〝声〟は大きなポイントとなった。「佇まいでは包容力が溢れているという感じではないのに、声を発した瞬間、その声をきいた瞬間に、自分を包んでくれるように感じる。声が包容力を醸し出す、稀有な存在」。撮影前の現場では、他の俳優との会話がいつの間にかリハーサルになるなど、人を巻き込む力が高いと話す。「知らない間に靴を脱いで、心の炬燵に入っている」ハセオに見事にはまった。

 優れた演出力で知られる三島監督だが、毎朝30分から1時間のディスカッションタイムでは、2人一緒ではなく個別に話した。「生々しいお芝居」を自由にしてもらいたかったからだという。動きの指示や希望もあえて伝えず、代わりに「ソファをここに置いたらこう動くよね」と、セットや小道具の配置、ロケ地の厳選で流れを作った。作中漂う何ともいえない2人の関係性は、こうした三島監督による演出の妙と、2人がその意図を「いろいろ発見してくれた」ことがかみ合って生まれたものだ。

 関係性においても、感情においても、言葉で説明しきれないものを丁寧に誠実に追いかけたという今作。ほか井上祐貴、三浦貴大、中島歩らが出演している。