中日・井上一樹監督(55)が29日、今季限りでの辞任を表明した。すでに球団サイドは後任人事に着手しているが、6年連続Bクラスと低迷が続くチームを立て直すのは容易なことではない。そんな中、中日OBの間からは〝強竜復活〟の切り札として、抜群の指導実績を持つ権藤博氏(87)の監督就任を熱望する声が上がっている。

「あと2試合をもって僕は辞めます。辞任します」。バンテリンドームで行われた練習後、井上監督は自らチームを去ることを明らかにした。最下位に沈む中日は141試合を戦って59勝80敗2分けの借金「21」。「成績、数字が上がらないということを考えれば、やはり自分がまず責任を取るべきだなというようなことの決断に至ったということです」と竜の指揮官は退任の理由を語った。

現在でもグラウンドに足を運ぶ権藤博氏
現在でもグラウンドに足を運ぶ権藤博氏

 井上監督の発言を受けて加藤宏幸球団社長も報道陣に対応したが、後任監督については「これから本格的な人選を行わなければいけない」と語るにとどめた。次期監督は2012年を最後にクライマックスシリーズ(CS)出場から遠ざかる暗黒時代からの脱却がマスト。侍ジャパン前監督の井端弘和氏(51)や今中慎二氏(55)、山本昌氏(61)ら有力OBだけでなく、外部からの人材登用も視野にチーム復活を託せる指揮官を求めていくことになる。

 次期監督問題で名古屋が揺れる中、中日OBの間から出てきたのが「監督が変わるなら権藤(博)さんにやってもらったらいいんじゃないか」という〝権藤監督待望論〟だ。権藤氏は1982年に中日、89年には近鉄の投手コーチとしてリーグ優勝に貢献し、98年には横浜(現DeNA)の監督としてチームを38年ぶりの日本一に導いている。中日が最後にクライマックスシリーズに進出したのは2012年だが、このときに投手コーチとしてチームを支えたのも権藤氏だった。17年には侍ジャパンの投手コーチを務め、WBCベスト4に貢献するなど日本球界を代表する名伯楽として知られている。

 元バッテリーコーチの金山仙吉氏(74)は「権藤さんは〝ダメだったら俺が責任取るから思い切ってやれ〟という男気のある人。チームの雰囲気を変える力を持っている。(権藤監督は)アリだよ」と猛プッシュ。また東大野球部出身で二軍監督や一軍作戦コーチを務め、落合監督時代には球団代表として球団運営を担った井手峻氏(82)も「権藤さんが監督をやったら勝つよ。投手のやり繰り、継投の達人だから。権藤さんは選手とも対話ができる人だし、(監督をやったら)面白いんじゃないか」と権藤内閣誕生を期待している。

 権藤氏は今年12月で88歳の米寿を迎えるだけに、普通なら監督就任は非現実的だと誰もが思うはずだ。メジャーリーグではアスレチックスのコニー・マック監督が87歳283日まで指揮を執ったのが最高齢記録となっている。それでもOBの間から「権藤監督待望論」が出てくるのは、名古屋のあちこちで権藤氏の〝超人伝説〟がささやかれているからだ。

「権藤さんは今でもダンベルを持って歩いているし、元気にゴルフもやっている。ビールもガンガン飲んでいるからすごいよ」と井手氏がいうように、名古屋市内では小型ダンベルを握りしめながらウオーキングをする権藤氏の目撃談も多い。また地元放送関係者の間からも「今でも毎日1時間くらい散歩やトレーニングをしているらしいです。食欲や酒量も全く衰えていませんし、〝エージシュート(ゴルフで自分の年齢以下のスコアで18ホールを回ること)は簡単だ〟と言ってました。まさに超人ですね」「日本の野球では〝投手は低めに投げろ〟が定説ですが、権藤さんはメジャーで主流になっている強いボールを高めに投げて打者を打ち取る〝ハイ・ファストボール戦略〟を唱えています。今年も米国へ行って(ロッキーズの)菅野に会っている。あのバイタリティーはすごいですよ」と、肉体だけでなく野球理論もブラッシュアップし続けている権藤氏を称賛する声が後を絶たない。

 6年連続Bクラスに沈み、2012年を最後にクライマックスシリーズ(CS)出場から遠ざかる現状に、ファンもOBも暗たんたる思いを抱いている。88歳となる名伯楽の監督就任を熱望する声は〝強竜復活〟へ救世主を求める魂の叫びなのかもしれない。