競馬界の異端児による新企画が誕生! 大のボートレース好きを自任する元天才ジョッキー田原成貴(67)がビッグレースを回顧する「水面の残像」がスタート。初回は26日に閉幕したボートレース宮島のプレミアムGⅠ「第27回マスターズチャンピオン」。華麗な優勝劇を天才はどう見たか――。
【水面の残像】本当に見応え満点の大会だった。ここ最近、生きのいい若手レーサーから刺激をもらう機会が多かったが、改めて技術と経験を積んだ名人たちの駆け引きに心を震わされた。やっぱり年に一度のマスターズを見なければボートレースを語れない。
MVPはもちろん、優勝した白井英治選手(49=山口)だ。今回は並大抵の優勝ではない。初日からの流れ、特に準優からのストーリーは実にお見事だった。私は初日ドリーム戦を逃げ切り、順当に予選トップに立った池田浩二選手の優勝を信じて疑わなかった。あの準優戦の進入を目の当たりにする前までは…。
ご存じのように準優12Rはインに構える池田選手に対し、白井選手は「3カド」の作戦に出た。ダッシュに引っ張っていく3号艇を見てゾクゾクしたね。これぞボートレースだって。その奇襲戦法が奏功。コンマ10を決めた白井選手は果敢にまくってイン池田選手を沈めた。思えば初日ドリーム戦も1枠・池田、3枠・白井の並びで白井選手は6着に沈んでいた。大舞台で池田選手に〝倍返し〟したことになる。
そして迎えた優勝戦。白井選手はまたも赤いカポックの3号艇だ。スローかそれとも準優のように引くのか注目していたが、やはり準優の再現とばかり「3カド」を選択した。前節のボートレース桐生GI「開設70周年記念」も制しており、勝負勘が冴え渡っていたのだろう。
だが、本当のすごさはここからだ。準優よりさらに早いコンマ02のスタートを決めた白井選手は同じようにまくるかと思いきや、2号艇・石渡鉄兵選手の抵抗にあった。白井選手はボートをポンと当てて〝攻めの構え〟を見せた直後、瞬時に差しに切り替えたのだ。
粗削りな若手レーサーなら準優同様にまくりに出ただろうが、白井選手は実に冷静だった。やや甘くなった石渡選手の懐を差し切り、見事に栄冠を勝ち取った。結果的に石渡選手の抵抗によって差し場ができたとすれば、それを生んだのはまぎれもなく3カドからの攻めによるプレッシャーだったに違いない。
ベテランの技が随所に光った今大会、最後にすべてかっさらっていったホワイトシャーク。いや、今回だけは「レッドシャーク」と呼ばせてもらおう。












