【取材の裏側 現場ノート】3月の大相撲春場所で大関琴桜(27=佐渡ヶ嶽)が窮地を脱した。1月の初場所は綱取りに挑んで5勝10敗と大きく崩れた。春場所は初のカド番で臨み、勝ち越しを決めたのは終盤の13日目。カド番脱出にも「満足するべきではない」と険しい表情のまま語った姿が印象的だった。もちろん、15日間を終えて8勝7敗は大関として胸を張れる成績ではない。

 それでも、父で師匠の佐渡ヶ嶽親方(元関脇琴ノ若)は今後の飛躍に必要な試練だったと位置づける。春場所前半、悪戦苦闘する琴桜を次のように諭したという。「先代(元横綱の祖父)の名前を継いで終わりじゃないだろ。先代の待っているところはどこだ? お前の横綱じゃないのか。だから、そこに向かって行け。名前をもらったから約束を守った、じゃない。お前の目標はもう一つ上なんじゃないか。先代は、お前の今の相撲を見て悲しまないか?」

 師匠と弟子の立場を超えて、父親として息子に抱く思いを込めた〝喝〟だった。佐渡ヶ嶽親方は「本当に、気持ちだと思う。どうしても、負けたくないと守りに入ってしまう。守りにいこうとすると、守り切れない。守りの相撲は、横綱になった時で十分」と力説する。「(琴桜は)技もあるし、体もある。あとは心が伴えば、もう一つ上へ行ってくれる」と精神面の成長に期待した。

 初場所後に横綱豊昇龍(立浪)が誕生し、5月の夏場所では大関大の里(二所ノ関)が綱取りに挑む。試練を乗り越えた琴桜の逆襲に注目したい。

(運動部・小原太郎)