【レジェンド雀士からの金言】忘れられない打ち手をひとり挙げるとしたら7歳年上の作家、白川道さんだという。「週に5回は誘いの電話が来る。それが20年間続いたからね(笑い)。白川さんはとにかく強い。勝負の駆け引きはものすごく鋭く、手作りもうまい。真剣勝負でも暗さがまったくない憎めない人。1日東風戦15回前後を週4回、年間200日以上やっていたからね(笑い)」

後輩達に檄を飛ばす荒正義
後輩達に檄を飛ばす荒正義

 修羅場をくぐってきたからこそ決めていたことがある。

「汚いことはしない。手積みでも全自動卓でもイカサマを仕掛けてきたり、なんでも欲しがる人間をいっぱい見てきたけど、荒正義という看板が泣くようなことはいっさいしなかったね」

 荒の武器は「相手と自分の運量の測定」だ。
「運量、要するにツキ状態に1~10という幅があるとして、真ん中あたりにいるとすれば、そこに合わせた打ち方をする。たとえば親満をアガった次局は、ツキ状態が高い打ち方に変えて一気呵成に攻めていくといったように、自分のツキ状態と相手3人のツキ状態をはかり、それに合わせて打牌に強弱をつけていくことは徹底してきたかな。何があっても前に出ないパターンも体に染み込んでいるからね」

 運量の測定精度を高めるため、新人王を獲得した23歳のころから続けていることがある。

「麻雀日記をつけることは50年たった今でも欠かさず毎日続けているよ。こういう時はこれを切った。でもこっちを切るケースもあったかもしれないなど、とにかく書いて記録する。書くことで脳にインプットされるからね。だからこのエッセーに牌姿が欲しいとなれば、日記を見ればすぐに探せるし、いくらでも作れる。記録してきた牌姿は漫画原作等、いろんなところで役立っているんだよね」

 Mリーグ人気で麻雀プロ志望者も年々増えている昨今、思うところがあるという。

「売れれば勝ちみたいな感じでやっている若い人が多い気がする。仮に容姿が整っているというだけで重宝されたとしても肝心の麻雀はひどい。プロである以上、麻雀だけはしっかり打てないとダメじゃないの?と。なかなか言う機会も相手もいないんだけどね(笑い)」
 麻雀に流れはあるのか、それともないのか。かつて麻雀界では二極化し、お互いが主張し合う時期もあったが、荒は心底どうでもいいと思っていたそうだ。

「目に見える手牌で一生懸命戦術を立てている若い人は多いけど、最も大事なことはツキの流れを把握すること。ツキを自分に引き寄せるために、俺たちは何十年も苦労して戦ってきた。全自動麻雀卓に流れなんてないという考えもあるかもしれないけど、流れや運の強弱を見分けられないで麻雀を語るなと言いたいね。運の強弱を見分けるためには経験値を上げるしかないけれど、そもそもそれを突き詰めようともしていない。結局そういう打ち手は勝負の場では勝てないけどね」

 座右の銘は「麻雀は運の芸」。

「小学生のころ、父から教わった囲碁には『碁は運の芸なり』という言葉がある。江戸時代の囲碁棋士、井上幻庵因碩(いのうえ・げんあんいんせき)の言葉なんだけど、超一流同士の戦いになれば“指運”というものがあって、右に打つか左に打つか。見た目も誰が見てもどっちもあるという場合でも、右に打ったら勝ちで、左に打ったら負けるということがある。であればなおさら麻雀は運を極めるゲームだと思うんだよね」

 大のお酒好きだが、古希を超えてから酒の量は以前の3分の1程度に減らした。

「酒を飲むとき、その1・5倍は水も飲むようにしているんだ。酔っぱらって転んだりするのが嫌なんでね(笑い)」

国士無双をアガった小島武夫を最終戦の最終局でまくった第7回MONDO王座決定戦。「あれほどの逆転劇はなかったかもしれない。たまたまですけどね」(画像提供=MONDO TV/(C)2004 Warner Bros.Discovery,Inc.or its subsidiaries and affiliates.All rights reserved.)
国士無双をアガった小島武夫を最終戦の最終局でまくった第7回MONDO王座決定戦。「あれほどの逆転劇はなかったかもしれない。たまたまですけどね」(画像提供=MONDO TV/(C)2004 Warner Bros.Discovery,Inc.or its subsidiaries and affiliates.All rights reserved.)

 麻雀を愛し、麻雀に愛された昭和の勝負師にとって麻雀とは――。

「なんかのインタビューで、俺は麻雀と結婚したようなものだねと答えたら、それを見たカミさんから『じゃあ私はなんなの?』と言われてしまった。余計なことは言うもんじゃないなと思ったね。でもやっぱり麻雀は人生そのものかな」 

☆あら・まさよし 1952年4月12日生まれ、北海道北見市生まれ。A型。日本プロ麻雀連盟副会長。主な獲得タイトルは同連盟五大タイトルである第5・29期王位、第8・28期鳳凰位、第3・5期グランプリ(現麻雀グランプリMAX)、第12期麻雀マスターズ、第38期十段位のほか、第1期新人王、第10期最強位、第4回MONDO21名人、第6・7回MONDO王座。著書は「40年間勝ち組を続ける男 荒正義直伝・麻雀サバキの神髄」「麻雀虎の穴」他。漫画原作も「鉄火場のシン」他多数。