漫画「セクシー田中さん」の原作者で漫画家の芦原妃名子(本名・松本律子)さんが29日、栃木県内で死亡しているのが発見された。50歳だった。昨年10月期の日本テレビ系で放送された同名ドラマを巡っては、芦原さんと制作サイドの間で事前の取り決めを巡る騒動が発生し、大混乱していた事実が明らかとなった。
捜査関係者によると、28日夜に知人から「連絡が取れない」として警視庁に相談があり、行方不明届が出されていた。
芦原さんは1994年に「その話おことわりします」でデビュー。2005年に「砂時計」で第50回小学館漫画賞少女向け部門を受賞したほか、12年に「Piece」がドラマ化されるなど人気漫画家だった。
昨年は漫画誌「姉系プチコミック」(小学館)で連載中の「セクシー田中さん」が10月期に日テレ系で女優・木南晴夏の主演により連ドラ化。だが、ドラマ制作の舞台裏では、内容や制作スケジュールを巡り大騒動が起きていた。
トラブルの一端がファンの目にも触れることとなったのは、ドラマの1~8話を担当した脚本家・相沢友子氏のインスタ投稿だった。
同氏は最終話放送の昨年12月24日に「最後は脚本も描きたいという原作者たっての希望があり、過去には経験したこともない事態で困惑しましたが、残念ながら急きょ協力という形で携わることとなりました」と投稿。同28日には「私が脚本を書いたのは1~8話で、最終的に9・10話を描いたのは原作者です。誤解なきようお願いします」と念押しすると、「今回の出来事はドラマ制作の在り方、脚本家の存在意義について深く考えさせられるものでした。この苦い経験を次へ生かし、これからもがんばっていかねばと自分に言い聞かせています。どうか、今後同じことが二度と繰り返されませんように」(原文ママ)とつづり、ドラマ制作サイドと原作者である芦原さんの間で想定外の事態が起きたことを示唆していた。
一方、芦原さんは今月26日に「X」(旧ツイッター)を更新(現在は削除)。「色々悩んだのですが、今回のドラマ化で、私が9話・10話の脚本を書かざるを得ないと判断するに至った経緯や事情を、小学館とご相談した上で、お伝えする事になりました」などと前置きし「ドラマ化のお話をいただき、当初の数話のプロットや脚本をチェックさせていただきながら、最終的に私が10月のドラマ化に同意させて頂いたのは6月上旬でした」(原文ママ)と明かした。
事情を知る関係者の話によれば、実際に制作現場は当初からかなりのタイトスケジュールに追い込まれていた。
「制作側は相当焦りました。10月期のドラマであれば、遅くても半年前の4月ごろまでにはオリジナルストーリーなのか漫画原作なのか、主要キャストは誰なのか――といった点が固まっている必要があるからです」
また、ストーリーや脚本を巡る調整も難航した。
芦原さんの投稿によれば、ドラマ化にあたって「『必ず漫画に忠実に』。漫画に忠実でない場合はしっかりと加筆修正をさせていただく」ことなどを求めたが、「毎回、漫画を大きく改編したプロットや脚本が提出されていました」。事実とすれば原作者として当然、納得できるわけがない。
「当初お伝えした『ドラマ化の条件』はどうなってしまったのだろう?という疑問を常に抱えた状態での加筆修正の繰り返しとなって、その頃には私も相当疲弊していました」(芦原さんの投稿から)
「田中さん」は連載中の作品で、ドラマ上の終盤にあたる8~10話は漫画原作でも未完だ。
「私があらすじ、セリフを準備する終盤のドラマオリジナル展開は8話~10話となりましたが、ここでも当初の条件は守られず、私が準備したものを大幅に改変した脚本が8話~10話まとめて提出されました」(同)
結局、制作の現場は収拾がつかなくなり、9話と最終10話は芦原氏が急きょ担当する形になった。
前出関係者は「芦原さんはドラマの第1話放送(10月22日)の2か月前を切った9月上旬の段階でも、クライマックスになる8話~最終話の構成を把握しきれなかった。自身が9話~最終話を担当したにもかかわらず、〝大丈夫なのかな…〟と半信半疑だったんです」と明かした。
芦原さんと小学館の担当者、脚本家などのドラマ制作側との間に入って窓口業務を担っていたのはプロデューサー陣だったという。
制作会社関係者は「プロデューサーの力不足感は否めません」と指摘する。ただ、漫画原作の核となった部分がドラマでカットされたことには「ドラマで分かりやすくした配慮だったと聞いています」と制作側をフォローした。芦原さんは28日、Xに「攻撃したかったわけじゃなくて。ごめんなさい」と短く投稿したのが最後だった。
日本テレビは29日に「芦原妃名子さんの訃報に接し、哀悼の意を表するとともに、謹んでお悔やみ申し上げます」と追悼。「2023年10月期の日曜ドラマ『セクシー田中さん』につきまして日本テレビは映像化の提案に際し、原作代理人である小学館を通じて原作者である芦原さんのご意見をいただきながら脚本制作作業の話し合いを重ね、最終的に許諾をいただけた脚本を決定原稿とし、放送しております」と説明し「本作品の制作にご尽力いただいた芦原さんには感謝しております」とのコメントを発表した。
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