新年を迎えて冬本番を迎えるなか、いまだツキノワグマの目撃情報が絶えない異常事態が続いている。5日には山形県鶴岡市の国道を横切るツキノワグマが目撃されたほか、島根県江津市の山林では6~7日と連続して目撃情報があり、さらに山口県防府市でも7日に足跡が見つかった。クマは冬眠中で安全かと思いきや、まだまだ危険だ。

 通常なら1月はツキノワグマが冬眠している時期だが、各地での目撃情報があとを絶たない。すでに2023年度は12月末までに過去最悪の被害件数を更新したが、冬本番を迎えても山に入る場合はクマへの警戒を怠れない状況が続いている。

“越冬グマ”の目撃情報が相次ぐ現状について、日本ツキノワグマ研究所の米田一彦氏はこう解説する。

「冬眠が遅れたり越冬するクマは2パターンある。1つは十分に栄養がとれている富栄養の強い個体。もう1つは病弱か高齢、もしくは親とはぐれた子グマで、十分な栄養をとれていない弱い個体です。越冬グマの痕跡を見つけた場合は、夏山同様に速やかにその場から離れることが重要です」

 これまでの傾向では、1月にツキノワグマによる人身被害はあまり起きていないが、過去には冬山で測量作業をしていたところ、家族で行動するクマに遭遇して襲われたケースがあるといい、例年より越冬グマが多いとみられる今冬も注意が必要だ。

 それ以上に注意が必要なのはバックカントリー(管理エリア外)でスキーやスノーボードを楽しむ人かもしれない。

「ツキノワグマは大きな切り株の根元にある空洞で冬眠していることが多く、雪が降り積もると何もわからなくなる。切り株が古かったりすると、クマが冬眠していると知らずに近づいた人が切り株を踏み抜いて冬眠中の穴に落下することがある」(米田氏)

 実際に米田氏は過去に調査で訪れた冬山で、何度か冬眠穴に落ちた経験があるという。ただし、冬眠中のクマは体温が低下して意識が混濁しており、基本的に穴に落ちてクマにぶつかっても2~3分は動けないので逃げる猶予があったと話す。しかし、場所によっては積雪が深く自力で冬眠穴からはい上がることが困難なケースもあり得るだけに、バックカントリーと呼ばれるエリアに1人で侵入するのは危険だ。

 また、ツキノワグマは冬眠穴の周囲の木の皮をはいで、自分の冬眠穴があることを知らせる習性があるというだけに、こうしたサインを見つけたら決して近づかないのが賢明だろう。

 越冬グマに冬眠中のクマ。個体数が異常に増えた日本の山は、冬も万全の注意が必要だ。