離婚を強要され息子と引き離されたとして、食品大手「ミツカン」創業家の故中埜和英前会長夫妻を元娘婿の中埜大輔氏が訴えていた訴訟の控訴審判決が1日、東京高裁であった。判決は地裁判決を踏襲し、元娘婿の敗訴となった。今後は日本の司法ではなく、息子がいると思われる英国に闘いの舞台を移すという。

 元卓球女子日本代表で五輪メダリストの福原愛さんの長男連れ去り問題が話題になったが、離婚などの理由で親と子どもが離ればなれになり、そのまま会えなくなることが問題化するケースが増えている。今回の件もその一つで、親子の引き離しが問われている。

 元娘婿の中埜大輔氏はミツカン創業家の次女と結婚し、2013年に婿入り。当初家族仲はよかったのだが、息子が生まれると義理の両親は態度を変え、中埜氏と息子の引き離しを行ったという。まるで〝種馬〟扱いにされたということで、種馬事件とも呼ばれている。

 ミツカンは「味ぽん」で有名な食品メーカーで1804年創業。愛知県半田市に本社があり、創業家の中埜家が同族経営してきた。中埜家は約200年にわたり、男子が一子相伝で「又左衛門」の名前を継いできたという、一般家庭とは異なる家風を持っていた。中埜氏の息子は待望の後継者だったのだろう。

 結局、妻とは離婚となり、息子とも会えないまま。現在、中埜氏はミツカンに対する訴訟と、かつての義理の両親に対する訴訟の2つを抱えており、今回は後者の判決だった。

 判決後に会見した中埜氏は「親子の引き離しによる苦痛や権利の侵害は誰の責任なのかを私は問題としていたが、その責任がすっぽりと判決からは抜け落ちている。非常に残念でがっかりです」と納得のいかない表情をした。

 裁判を始めて9年となる。息子とは4年会えていないという。そこで中埜氏はある決断を下した。息子が生まれた当時、中埜氏は妻とともに英ロンドンに住んでいたこともあり、「英国に息子がいると思われるので、英国の司法制度を利用し、闘う場を英国に変えたい」という。

 英国ではどうなるのか。会見後、中埜氏は取材に対し、「英国では面会交流を求めて闘います。息子と私は親子として交流する権利があることを前面に押し出していく。訴える相手は元妻になります」と話した。4年前に息子と会う機会があったが、コロナ禍などの影響もありそれ以上のアクションが取れていなかった。

「英国と日本では面会交流の仕組みが全然違います。英国では子どもが中心で、(面会交流を)邪魔しようとしたら邪魔していた方の親がペナルティーを科されます。日本とは逆でしょう」(同)

 英国での裁判結果は日本にも影響を与えるかもしれないという点で社会的意義があるとも指摘。「例えば英国で半年以内にいい条件で息子と会えたとしたら、9年間闘っても会えなかった日本との差が浮き彫りになりますよね。日本の司法制度がおかしいのではないかとなり、そこに社会的意義があるのかなと」(同)

 現在、中埜氏は英国での裁判のためにカンパを募集中。日本でも共同親権が議論されるなど関心が高まっている。果たしてどうなるか。