国の天然記念物「奈良のシカ」に虐待騒動が浮上している。奈良県と奈良市は2日、「奈良のシカ」の保護に取り組む「奈良の鹿愛護会」に所属する獣医師から、同会の施設で十分な餌が与えられていないなどと通報があったと発表。県と市は調査をする方針だ。愛護会は「虐待はない」と反論している。
愛護会の保護施設「鹿苑(ろくえん)」では、農作物に被害を与えたシカなど約240頭を「特別柵」と呼ばれるエリアに収容している。獣医師が特別柵内のシカに十分な餌が与えられていないと主張しているのに対し、愛護会は「十分に与えているが、ストレスを抱え衰弱してしまう」と虐待を否定している。
奈良のシカは観光の目玉の一つであり、奈良のシンボルになっている。一方で、周辺農家への「鹿害」といわれる農業被害が発生したこともある。
1979、81年に周辺農家が春日大社、愛護会などに損害賠償を求める訴訟を起こし、85年に和解。その和解条項の一つが特定の区域外に出たシカから農作物を守るため、生け捕りにし、鹿苑に収容するということだった。
奈良公園のシカの頭数は毎年7月に調査が行われる。愛護会によると、2009~14年は1100頭未満だったが、それ以降増え続け、15年に1191頭、19年には1388頭となった。その後、1286頭(20年)、1105頭(21年)、1182頭(22年)で、今年は1233頭だった。
動物事情通は「コロナ禍で、観光客が減り、鹿せんべいをもらえなくなったためか、数を減らしていたのが今年は1200頭台に戻っていた。せんべいなしの生活へシフトが成功したということです。コロナ禍が明け、せんべいをもらえるようになったら、もっと増えることが考えられます」と指摘した。
頭数が増えれば、鹿害の可能性も高くなってしまいそうだ。










