【取材の裏側 現場ノート】大相撲秋場所で横綱照ノ富士(31=伊勢ヶ浜)が腰痛で初日から休場した。横綱土俵入りがない本場所は、やはり一抹の寂しさを感じさせる。その照ノ富士は、あと2回で到達する優勝10回を大きなモチベーションとする一方で、最近は世代交代を意識する発言も増えた。秋場所前の2日に行われた横綱審議委員会の稽古総見後、照ノ富士は次のように話している。

「自分がいようがいまいが、次の世代が頑張ってくれるので。それと同じく、自分らも前の世代がいようがいまいが、頑張ってきているので。(大相撲は)そうやって、繰り返していくものだから。俺がいなくても…って感じですかね」

 謙遜ではなく、本心だと思う。照ノ富士自身、横綱白鵬が現役晩年に休場を続ける中で土俵を支え、やがて番付の頂点を極めた。ただ、その過程では〝宿命〟としか思えないような巡り合わせもあった。一昨年の名古屋場所千秋楽、1敗の照ノ富士は全勝の白鵬と直接対決。大熱戦の末に敗れはしたものの、その後に引退する白鵬と入れ替わるように横綱昇進を決めた。

 勝敗の結果はどうであれ、台頭してくる次世代の挑戦を受けることも、横綱の務めと考える。照ノ富士自身、先の発言の直後に次のように語っていた。「当然、土俵に立っている限りは、できるだけのことは尽くしていきたい」。一人横綱の復活と、次の横綱候補との頂上決戦の実現を願うばかりだ。