YASUKO「9月の海はクラゲの海」

 2002年からスタートした「魔法遣いに大切なこと」シリーズは、漫画、テレビアニメ、実写映画、小説とマルチのメディアで展開する青春ファンタジーストーリー。その第3作として08年夏に放送されたアニメが「魔法遣いに大切なこと~夏のソラ~」だ。

 今回取り上げる曲は、第2話で流れた挿入歌「9月の海はクラゲの海」。歌っているのはアニメオリジナルキャラクター・YASUKOとして、その声も担当した女性シンガー・ソングライターの笹生実久。YASUKOは下北沢で路上ライブをやっているストリートミュージシャンという役どころで、この曲を含むアルバム「下北沢北口、銀行前にて」もYASUKO名義でリリースされている。

 ご存じの方もいるかもしれないが、実はこの曲、1986年に発表されたムーンライダーズの人気曲をカバーしたもの。ファンの間ではムーンライダーズを代表するナンバーのひとつとして37年たった今でも愛されている名曲だ。鈴木慶一がボーカルを担当したオリジナルバージョンと、アニメで使用されたYASUKOのバージョンでは、当然ながらアレンジも全く異なり印象はかなり違う。しかし、それだからこそこの曲が持つ“ポップ”としか言いようがないメロディーの素晴らしさを改めて認識させてくれるのだ。

 作曲したのは、2月14日に亡くなったキーボード担当の岡田徹さん。そういえば06年に日比谷野音で開催されたムーンライダーズの30周年記念ライブでこの曲を歌ったのは、ゲストとしてステージに上がった高橋幸宏さんだった。その高橋さんも1月に亡くなってしまったが、「9月の海はクラゲの海」はこれからも多くのアーティストにカバーされるだろう。世間的には知名度が高いとは言い難い“知る人ぞ知る名曲”が、より多くのリスナーの耳に届くことを願いたい。