NHK経営委員会は5日、来年1月24日に任期満了となる前田晃伸会長(77)の後任に元日本銀行理事の稲葉延雄氏(72)を選出した。新会長人事では、元文科省事務次官の前川喜平氏(67)やNHK党の立花孝志党首(55)が名乗りを上げ、にぎやかになっていた。一方でNHK職員からは悲痛な声が上がっているという。
NHK会長は2008年にアサヒビール元会長の福地茂雄氏が就任して以降、前田氏まで5人連続で外部からだった。
今回の会長人事をめぐっては、NHKの政権忖度報道を問題視した市民団体「市民とともに歩み自立したNHK会長を求める会」が「前川氏こそ会長にふさわしい」と推薦。この動きに立花氏も「NHKのことを一番よく分かっているのは自分しかいない」と手を挙げていた。
もっともNHKの会長人事は経営委員会が決めるもので、公募制や公選制でもない。前川氏も「一石を投じることができれば」と仕組みを承知の上で応じ、立花氏も会長人事に注目が集まればとの訴えだった。結局、現リコー経済社会研究所参与を務める稲葉氏が選出。経済人を望む岸田文雄首相の意向が強く反映されたとみられ、後日、指名部会の議事録は公開されるものの、詳しい人選過程はブラックボックスの中となる。
NHKにはネット時代の公共放送のあり方や受信料&訪問営業の見直し、経営のスリム化、偏向報道や記者の過労死などのガバナンス改善…と問題が山積している。
市民団体には現役のNHK職員から「公共ではなく経済集団に変わっていることへの危機感がある」「改革は結構だが、現場は負担が増え、職員に分断が生まれている」「縮小して、受信料を下げていくしか理解されない」「放送法が変わればNHKは一瞬にして消え去る存在」「もはやNHKが存続することだけが目的の組織」と悲痛な叫びの声が寄せられていた。
新会長となる稲葉氏は「できるだけ早く実情を把握し、公共放送の使命にふさわしい仕事をしてまいりたい」とのコメントを発表した。岸田首相の意をくみ、現行体制で選出されているだけに「NHKをぶっ壊す!」や「官邸に一切忖度しません」と言い切るタイプではないのは明らかだ。
さまざまな外圧や諸問題にどう応え、新しいNHKを作り上げることができるのか。「NHK会長ポストは経済界では貧乏くじ」とも揶揄される中、稲葉氏は火中の栗を拾ったのか、それともただのお飾りなのか? その手腕が注目される。












