「政治とカネ」の問題で辞任圧力が高まっていた寺田稔総務相(64)が20日夜、岸田文雄首相に辞表を提出した。事実上の更迭だが、政界では「首相官邸が機能不全に陥っているのではないか」と不安視されている。というのも、寺田氏は同日午前に辞任を否定していたからだ。官邸のガバナンスの欠如は他の問題に波及するおそれもあり、特に新型コロナウイルス第8波を前に自治体関係者からは心配の声が上がっている。
寺田氏に浮上した疑惑は、関係する政治団体の会計責任者が故人だったというものに加え、政治資金をめぐる問題が複数指摘されていた。総務省は政治資金規正法を所管する省庁であり、疑惑のある政治家がトップを務めることに野党から批判があった。後任に松本剛明元外相の名前が浮上している。
寺田氏は20日午前、地元・広島で報道陣から「辞任しない考えは変わらないか」と問われ、「はい」と答えていた。その時点ですでに「更迭を検討」と報じられていたのにもかかわらず、完全否定。結果的に同日夜に辞表を提出したことを思えば、「はい」と言う必要はなかった場面だ。この寺田氏の言動により、岸田政権のグダグダ感が強調されてしまった。
政界関係者は「要するに官邸がグリップできていないということです。本来なら官房長官や首相秘書官が総務相サイドと連絡を取り合って矛盾のないようにするはずです。『辞める』と言わないまでも『辞めない』と言う必要もないじゃないですか。メディアへの発言を官邸がコントロールするべきでした。ガバナンスが効いていません」と指摘した。
岸田氏が恐れていた辞任ドミノになってしまっている。先月には世界平和統一家庭連合(旧統一教会)との関係を説明できなかったことで山際大志郎氏が経済再生担当相を辞任、今月11日にも死刑をめぐるハンコ発言で葉梨康弘氏が法相を辞任。寺田氏で3人目だ。
「内閣改造でもしないと何も物事を進められないのではないか。それほどまでに官邸が機能していないように思えます」(同)
官邸のガバナンスのなさは、ほかの問題にも波及しかねない。地方自治体関係者は「コロナの第8波が始まっているとされますが、年末年始にどこまで感染拡大するか不安があります。このままの官邸でちゃんと対応できるのかどうか」と心配している。
というのも、コロナ対策で官邸の調整不足が指摘されたことがあったからだ。
「(感染者の詳しい情報の報告を求める)全数把握の見直しを政府として表明する際、ウチの自治体は聞いていませんでした。そこで厚労省の担当部署に問い合わせると『知りません』って言うんですよ。官邸と厚労省で調整していなかったみたい。今でもコロナで何かあった時、誰に連絡すればいいのか分からない面があります」(同)
検討してばかりで「検討使」と批判される岸田氏だが、「そもそも決断するための情報が岸田氏に上がっていない可能性もある」(前出の政界関係者)との指摘もある。
機能不全のしわ寄せはあらゆるところに及びそうだ。












