156人が死亡した韓国・ソウルの梨泰院での群衆なだれ事故を受けて、厳戒警備態勢が敷かれた渋谷のハロウィーンは無事に終了した。しかし、まだビッグイベントが控えている。今月は世界最大のスポーツイベント・サッカーW杯が行われる。優勝候補のドイツ、スペインと同組の日本代表は前評判が低いとあって、渋谷の街も盛り上がりに欠けるとみられるが、予想を覆す結果が出ればハロウィーン以上の大混乱に陥りかねない事態を迎える。

 渋谷の街はどうなるのか――。20日に開幕するサッカーW杯カタール大会で、日本代表は23日ドイツ戦(午後10時=日本時間、以下同)、27日コスタリカ戦(午後7時)、12月2日スペイン戦(午前4時)とグループリーグを戦う。世界最大の国民的スポーツイベントだけに、これまでのW杯で渋谷は常に騒乱の舞台となってきた。

 1日にメンバーが発表され、いよいよW杯モードに突入するが、現時点での日本代表への期待値は低いのが現状だ。海外リーグで活躍する選手が多数を占めるものの、本田圭佑のような傑出したスター選手はおらず、ハデさはない。さらにグループステージでは優勝候補のスペインとドイツと同組になり、ノックアウトステージ進出へのハードルも高いとみられている。

 しかし、難局だけにその反動も大きく出る可能性がある。思い出されるのが2010年の南アフリカW杯だ。岡田武史監督率いる代表は直前のテストマッチは4連敗。チームの中心だった中村俊輔をスタメンから外すドタバタぶりで、W杯のたびにサポーターやヤジ馬が繰り出してきた渋谷の街も初戦のカメルーン戦前は静寂に包まれ、何事も起こらないとみられていたが…。

 本田圭佑のゴールでサポーターは狂喜乱舞し、深夜の渋谷は“マッドシティー”と変貌。当時の本紙取材ではセンター街を走っていたタクシーが取り囲まれて立ち往生し、窓ガラスを割られた挙げ句、車体をボコボコにされた惨事を詳報。また、黎明期だったツイッターが多くの人を渋谷に集め、集団熱狂につながったとも報じていた。

 続くオランダ戦を前には「ハチ公前を封鎖せよ」と警戒されるほどで、「岡ちゃんごめん」と手のひら返しで日本列島は日本代表応援の声に包まれ、第3戦で決勝トーナメント進出を決めた際には、渋谷のスクランブル交差点には1000人が「ニッポンコール」で大はしゃぎとなった。

 あれから12年。ツイッターの拡散力は当時をはるかにしのぎ、大勢の人々が渋谷を目指して全国から集結する状態になっている。ドイツ戦、コスタリカ戦はゴールデン・プライム帯時間にキックオフ。しかも、ともに休日で、南アフリカ大会と同じように予想に反し、大番狂わせで勝利して国民の期待に火がつけば、再び渋谷が無秩序な“マッドシティー”になりかねない。

 渋谷センター商店街振興組合事務局の小野寿幸理事長は、「渋谷に過剰に集まる人たちはおカネを使わない上に、近隣の住民たちが怖くて街に繰り出せないから、商店街の売り上げも落ちて大迷惑です」と話す。

 小野氏はハロウィーンに続くW杯の大狂乱を望んではいないが、森保監督が掲げた「目標ベスト8以上」が達成された時には…。渋谷の街はかつてない盛り上がりとなるのは必至だ。