20日に第167回芥川賞、直木賞(日本文学振興会主催)の選考会が都内で行われ、芥川賞に高瀬隼子氏(34)の「おいしいごはんが食べられますように」(群像1月号)、直木賞は窪美澄氏(56)の「夜に星を放つ」(文藝春秋)が受賞作に決まった。

 窪氏の受賞作はコロナ禍の中での人の別れのかなしみを描いた。窪氏の作品の特徴は「生、性、死」の3つが表現されていることだが、まさに窪氏の人生そのもの。実家は酒店だったが、父親が自己破産し短大を中退。長男を生まれてすぐに病気で亡くしている。その後、44歳で小説家デビューし、新潮社の「女による女のためのR18文学賞」を受賞し、官能小説を書き続けた。

 直木賞決定には「私の人生は変わってると思います。44歳でデビューして昔の作家だったら心中して死んでるぐらいの年齢(笑い)。もし神様みたいな人がいるとしたら『なかなかイキなことをやるじゃん』って言いたいですね」と笑顔を見せた。

 5人の候補者全員が女性で話題になった芥川賞では、元セクシー女優で元新聞記者という異色の経歴で注目を集めた鈴木涼美氏(39)の「ギフテッド」(文學会6月号)は受賞を逃した。

 芥川賞選考委員の川上弘美氏は「母と娘の距離感が非常によく描かれ、小説として優れている。語り手は歌舞伎町・夜の街で暮らしている女性という設定なんですが、そこで暮らす人たちの生活の手触りがとてもよく描かれている。ただ、亡くなっていく母と娘との関係が終焉に向かう時に『話がうまく作られすぎてるのではないか』や『文章が説明的すぎるのではないか』という意見もありましたが、『とても洗練された文章である』と言った選考委員もいました」と選考について明かした。