“女芸人マニア”として知られているお笑いコンビ「馬鹿よ貴方は」の新道竜巳が、これから“馬鹿売れ”しそうな女芸人を紹介する。今回は、元気がなくて棒読み…。漫才の基本を全く使わないという、異色の男女漫才コンビが登場です。


【プロフィル】
 コンビ名‥プノまろ
 所属‥マセキ芸能社
 結成‥2019年5月
 女性‥鉄ヘチマ
 男性‥棒
 SNS‥ツイッター@punomaro

 感情を捨てた漫才師とでも言えばいいのでしょうか? 存在が消えてしまいそうなんですが、不思議な魅力がある男女コンビです。ツイッターも「プノまろ」という名義でやっているんですが、どちらがやっているのか全く分からない。しかもこのツイッターで1人だけフォローしているのですが、その相手は第266代ローマ教皇・フランシスコ。全く意味が分かりません。

 こんな2人がやっている漫才は、かなり異質です。いくつか特徴があるので、挙げてみましょう。

 ①漫才の基本を一切使わない。いわゆる「漫才ならこうする」ということを全くやらないんです。まず元気がない。若手の漫才コンビなら、「はい、どーもー!」と元気よく登場するのが普通ですが、そんなことは一切しない。それどころか、オーバーアクション的な動きは全く取り入れていません。

 ②会話が棒読み。こう言うと「まだ技術が足りないだけじゃないの?」と思うかもしれませんが、2人がコンビを結成した直後は、もっと人と人との会話っぽくしゃべっていました。それをいま、棒読みに変えてやっているんです。ただ棒読みとはいっても、言葉が聞き取りにくそうな時や、聞き慣れていない言葉を言う時は、ゆっくり、はっきりしゃべる。そのあたりの配慮はしっかりされています。「いま、ここが大事ですよ」という感じの話し方になるので、それほど聞きにくくはありません。

 ③お客さんを見てしゃべらない。斜め上あたりを見てしゃべっているように見えます。漫才でしゃべる時は本来、お客さんの方を見てしゃべるのが当然とされていますが、プノまろさんはそうはやらない。こちらも、コンビを結成したばかりのころは客席を見てしゃべっていたので、あえて目線を外してやっているのだと思われます。

 ④ネタに女性としての役割が入ってない。男女コンビだと、どうしても男女である意味を求められがちですが、そこに対しては特に取り入れていないようです。多分男性同士のコンビでもできるネタなのですが、逆に言えば、男女コンビでも問題なく進行できるネタなのでしょう。

 ⑤ツッコミが不在。男性の棒さんは、立ち位置としてツッコミ的なポジションではあるのですが、実は全く違う機能をきたしていることが多い。漫才では、ボケに対してツッコむという役割で分かりやすく演じるのが普通ですが、そこがあまり見当たらない。

 たとえがたとえとしての意味をなしていないし、聞き返すべきところで聞き返さない。一例として、こんなやりとりのネタがあります。

 鉄ヘチマ「君ってさ、ワープできる?」

 棒「いや、俺はできへんけど、友達にできるヤツおんねん」

 本来なら、「君ってさワープできる?」と聞かれると、「急に、なに?」とツッコむのが漫才のパターンですが、そういう人間的な会話は一切入れたくないのか? 意図はよく分かりませんが、普通の人間が行う会話からだいぶ離れているやりとりが目立ちます。

 別のネタでも「お年寄りって自分で硬いものをかみ砕けないから、イモケンピとかはバールで粉々になるまで叩いて食べるでしょ?」、「そうやな」というやりとりがある。そもそも一般的な人間の会話で、こんな返しは考えられません。

 それ以前に「鉄ヘチマ」と「棒」って、どんな名前なんだよ!と思った人もいるとは思いますが、この2人の場合は名前なんかどうだっていいんです。たとえ普通では考えられない会話でも、この2人でなければやれないと思わせることがすごいと思います。


 ☆しんどう・たつみ 1977年4月15日生まれ、千葉県出身、本名・濱島英治郎。平井“ファラオ”光と組む「馬鹿よ貴方は」として「THE MANZAI」「M―1グランプリ」で決勝進出を果たした実力派。緻密なネタ作りに定評がある一方、女芸人ナンバーワン決定戦「THE W」では、予選会場に足しげく通い、ほとんどの出場者のネタを見るほどの“女芸人マニア”。