大相撲初場所(14日初日、東京・両国国技館)を控える中、またしても角界で不祥事が発覚した。日本相撲協会は5日、昨年12月の冬巡業中に立行司の式守伊之助(58=宮城野)が10代の行司にセクハラ行為を行っていたことを発表した。大相撲では番付最高位の元横綱日馬富士(33)が暴行事件を起こしたばかり。今度は行司の最高位である立行司が不祥事を起こしたことで、角界内に新たな衝撃が走った。相次ぐ“不祥事の連鎖”の背景にあるものとは――。 

 日本相撲協会の発表によると、立行司の式守伊之助によるセクハラ行為があったのは沖縄・宜野湾市で冬巡業が行われた12月16日の夜。伊之助は宿泊先のホテルで食事中に泥酔し、10代の若手行司に自室まで送られた。その際に若手行司の唇に舌を這わせ、胸にも触れる行為をした。事実を知った別の行司が5日夕方に協会へ報告したため、問題行為が発覚した。

 その後に危機管理委員会の高野利雄委員長(元名古屋高検検事長)が当事者らに聞き取り調査を実施。午後11時過ぎになって協会が発表する異例の事態となった。伊之助は危機管理委の調査に対して「泥酔していたので覚えていない」「自分は男色の趣味はないので、なぜこのような行為をしたのか分からない」などと話す一方で、自身の非については認めており、すでに若手行司には謝罪したという。

 若手行司はショックを受けているものの、警察に被害を届け出る考えはないという。折しも、角界では日馬富士が昨秋の巡業中に暴行事件を起こしたばかり。相次ぐ不祥事の連鎖に協会内は大きな衝撃に包まれている。八角理事長(54=元横綱北勝海)は「(他の行司を)指導する立場にある立行司として本当に情けない。以前から酒の席での言動に注意はしていた。それで、またこういうことを…。行司の長として情けない」と怒りで声を震わせた。

 事件が起きた状況も被害の程度も大きく異なるとはいえ、2つの不祥事には驚くほど共通点が多い。師匠の目が届きにくい巡業中の出来事で、ともに酒が入った上でのトラブル。「横綱」と「立行司」という最高位に立つ者が弱い立場の相手に行った点では、パワハラの要素も含まれている。事件の背景が同じ根でつながっているとすれば、大相撲が抱える構造的な問題と言われても仕方あるまい。

 若手行司は伊之助の処罰を求めていないというが、相撲協会は他の行司の模範を示すべき立行司が起こした不祥事を問題視。近日中に臨時理事会を開き、懲戒処分を検討することになった。日馬富士の暴行問題への対応をめぐり協会の姿勢が厳しく問われるなか「出場停止」や「降格」などの重い処分が下されることは避けられそうにない。初場所は立行司不在で迎えることが濃厚だ。

 相撲協会は4日の評議員会で、貴乃花親方(45=元横綱)の理事解任を決定。暴行事件をめぐる一連の問題に区切りをつけた。失った信頼の回復に向けて出直しを図ろうとした矢先に、新たな不祥事が発覚するとは…。

 改めて八角理事長ら協会執行部の責任問題が浮上するのは避けられない状況となったが、弟子暴行死事件をはじめ、八百長問題、違法賭博問題など、世論を騒がせる不祥事が相次いでいる角界は本当に体質改善を果たせるのだろうか。大相撲はかつてない危機的な状況に直面している。