ある時、徳川家康が春日局に「この世で一番うまいものは何か」と尋ねたところ、「それは塩です」との答え。「では、一番まずいものは何か」と再度尋ねると、「それも塩です」と春日局は答えたという。

 つまり「どんな料理にとっても、塩の量の多寡(加減)で、うまくもまずくもなる」ということを端的に表現しており、塩の量が適当なのを「いい加減」という。「適当な」という意味ではなく、「よい加減」という意味だ。

 塩はカロリーは「0」であるが、漢方医学では体を温める「陽性食品」。

 よって、北に行くほど塩分摂取量が増える。今のような暖房施設が普及してなかった50年以上前の東北地方では、1日1人当たりの塩分摂取量が「28グラム」もあったという。鹿児島のそれの約2倍であった。

 アメリカの学者L・K・ダールが日本に来て塩分摂取量と高血圧、脳出血の発症率が比例しているという論文を書いたのが1950年代。これをきっかけに「塩分は悪」の図式ができ上がり、減塩運動が展開されていくことになる。

 今は全国一律「1日の塩分摂取量は8グラム以下」が望ましいとされている。昭和32(1957)年の日本人の平均体温=36・9度、今の人達のそれが35・8~36・2度と、約1度下がり、その結果、免疫力が低下し、ガン、肺炎、リウマチなどの免疫異常の疾患、うつ、自殺が増加する下地を作っていることに気付いている医学者はほとんどいない。

 一方、酢は梅酒を放置して作ることが多かったという。調理をする時の「塩」と「梅酢」のバランスこそが、料理の味を引き立たせる妙であり、それを「いい塩梅」という。

 ☆石原結實(いしはら・ゆうみ)1948年、長崎市生まれ。医学博士。イシハラクリニック院長として漢方薬と自然療法によるユニークな治療法を実践するかたわら、静岡・伊豆でニンジンジュース断食施設の運営を行う。著書は300冊超でベストセラー多数。最新作は「50歳からの病気にならない食べ方・生き方」(祥伝社)。