国内で8日、新たに8480人の新型コロナウイルス感染者が報告された。8000人を超えるのは昨年9月11日以来。都道府県別では沖縄が1759人、東京1224人、大阪891人などとなっている。厚生労働省によると、重症者は前日から2人減って89人だった。政府は9日、沖縄・広島・山口3県にコロナ対応のまん延防止等重点措置を適用。全国で「第6波」の様相が濃厚となるが、新変異株「オミクロン」の恐怖は感染した当人が気付かずにばらまいてしまうことだろう。ある感染者を取材した。

 オミクロン株の影響で新規感染者は関東や関西などの都市部を中心に全国で増加している。現在の人数は昨年12月のクリスマス前後の状況を映しているとされる。年末年始の人の移動を踏まえると、感染はさらに拡大する恐れがある。

 東京都の8日の新規感染者は1224人だった。1週間前の1日に確認された79人の約15倍で、1200人を超えるのは昨年9月11日以来。小池百合子知事は「デルタ株からオミクロン株に景色が一変し、驚異的な拡大が続いている。成人式の後の飲み会が拡大につながるのでマスク着用を徹底してほしい」と呼び掛けた。

 感染力が強いとされるオミクロン株の“目に見えない怖さ”が、新型コロナ入院患者の証言であらためて浮き彫りになった。

 都内マンションで1人暮らしの70代男性は、年明け2日に38度の熱が出て、脱力感や喉の痛みもあった。夜にクラブで飲む予定だった4日の昼、念のため発熱外来を予約し検査したところ、感染が判明。

「風邪をひいたぐらいの状態だったから『陽性』って聞いても別に何とも思わなかった」

 症状が重ければ、重症化や死への恐怖がわいていたかもしれないという。

 4日には「熱が37度台に下がり、普通に元気にしていた」そうだが、高齢ということもあり、感染者受け入れ病院に入院。5日には熱も36度台になり、その後症状は落ち着いている。

「ただメシを食って、寝てるだけ。こう言っちゃなんだけど、楽でいい」

 男性に持病はなく、ワクチンも2回接種済み。「いつ、どこで感染したか全く分からない。普段あまり出歩かないし、電車にも乗らないし、人とも会わない」

 唯一、感染したタイミングと疑うのは、年末30日に30代OLと飲みに行った歓楽街の居酒屋。しかし「小さい居酒屋で、店内はガラガラだった。一緒に飲んだ子には症状もなく、4日から普通に出勤している」という。

 昨秋以降、毎日検温を欠かさず、健康には気を付けていたという。

「今回はいつもの風邪より少し脱力感があったし、風邪を飲み屋の子にうつしちゃ悪いと思ったんで、病院に行った。で、コロナと分かった。以前なら“ただの風邪かな”と思って飲みに行っちゃってたかもしれない」

 8日時点で病院からは「オミクロンかどうか、あと10日ほどしないと分からない」と言われているというが、症状からしてオミクロン株の可能性が濃厚だとみられている。男性は発熱があり、飲みに行くために検査を受け、陽性という結果が出た。即日結果が出なければ、ただの風邪だと思い込んで、ばらまいてしまったかもしれない。

「いくら気を付けてても、今のコロナは感染力が強いみたいだから、かかりたくなければ外出を控えるしかない」としみじみ語っていた。