「難民問題を生み出したのは欧米」プーチン発言を佐藤優氏が指摘 ロシア、ベラルーシ敵視するEUに配慮不要

2021年11月22日 16時00分

佐藤優氏
佐藤優氏

【マンデー激論】日本ではそれほど大きく報道されていないが、ヨーロッパでは中東からベラルーシ経由で流入してくる難民・移民が深刻な問題を引き起こしている。

 EU(欧州連合)は、ベラルーシが故意に中東などからの難民・移民をEU諸国に送り込んでいると見ている。ベラルーシの背後にはロシアがいて、難民・移民を用いてヨーロッパ社会を弱体化させるためだとEUは考えている(かなり被害妄想的な発想だ)。

 ヨーロッパは開戦前夜のように緊張している。11月13日、ロシアのプーチン大統領が欧米諸国のベラルーシに対する姿勢を批判した。

<ベラルーシが近隣の欧州連合(EU)加盟国に中東からの移民・難民を送り込んでいると批判されている問題について、国家連合を組むロシアのプーチン大統領は「難民問題を生み出したのは欧米だ」と述べ、ベラルーシのルカシェンコ政権を擁護した。ロシア大統領府が13日公表した国営テレビとのインタビューで明らかにした。/プーチン氏は問題について、アフガニスタン、イラクなどへの欧米の軍事介入が原因だと指摘。ベラルーシには目的地とされるドイツと協議する意思があるとし、「話し合いでの解決を望む」とも述べた。>(14日「朝日新聞デジタル」)。

 ロシアやベラルーシが意図的にイラクやシリアからの難民・移民をヨーロッパに送り出していることはない。

 ただし、難民・移民の入国を抑制するために積極的な措置は取らなかった。仮に難民・移民がベラルーシもしくはロシアを最終目的地とするならば、ベラルーシはもっと厳格な対応を取ったと思う。

 しかし、難民・移民にとって、ロシアもベラルーシもまったく人気がない。難民・移民が目指すのはドイツ、ベルギー、フランスなどの経済力のある国だ。ロシアやベラルーシを敵視するEUに配慮する必要はないとプーチン大統領もルカシェンコ大統領も考えている。

 ロシアからすると、イラクやシリアに軍事介入したのはNATO諸国であるにもかかわらず、そのために生じた難民・移民の責任をロシアに転嫁するのは言語道断とプーチン大統領も大多数のロシア国民も考えている。EUがベラルーシに対する制裁を強化しても、ベラルーシとロシアが譲歩する可能性はない。この問題に関しては、制裁ではなく生じてしまった問題を解決するための実務的協議が重要だ。ポーランドの強硬論をEUと国連が抑える必要がある。

 ☆さとう・まさる 1960年東京生まれ。85年、同志社大学大学院神学研究科を修了し、外務省に入省。ソ連崩壊を挟む88年から95年まで在モスクワ日本大使館勤務後、本省国際情報局分析第一課で主任分析官として活躍した。2002年5月、背任容疑などで逮捕され、09年6月に執行猶予付き有罪判決が確定した。20年、「第68回 菊池寛賞」を受賞した。最新著書は「ドストエフスキーの予言」(文藝春秋)がある。

【関連記事】

関連タグ:

ピックアップ