日本競輪選手養成所の119回生として競輪選手となる訓練を受けている“トータルサイクリスト”新村穣の第4回コラムは、競走訓練という実戦形式の訓練について、細やかに候補生の心理などを書き出している。

 東スポ、中京スポ、大スポ、九スポ読者のみなさま、こんにちは! 日本競輪選手養成所(以下、養成所)第119回選手候補生の新村穣です。朝晩の冷え込みとともに、養成所から見ることができる富士山も積雪した姿に変わり、秋の訪れを感じています。

 10月に入り、養成所での訓練もこれまでの脚力の強化を目的とした内容から、競走訓練を取り入れて、より実戦に近い形でのトレーニングへと変わってきました。公営競技としての競走を公正安全に成立させられる選手を養成するために、前回までのコラムでも紹介してきた学科訓練と実科訓練を行っています。

 入所から5か月がたち、ようやく競走を行うための最低限のルールを覚えられました。余談ですが、学科訓練では前述の競技規則の他にも、競輪を運用している自転車競技法や、社会人として身に付けておきたい一般教養、そして卒業後もアスリートとして自己管理が必要な知識としてスポーツ医学、スポーツ栄養学などの科目を1年間学ぶことができます。

 話は競走訓練に戻りますが、私たち選手候補生が養成所を卒業するためにはある一定の回数の競走を行わなければいけません。そして、一競走ごとの着位によって競走得点も与えられ、卒業までに積み重ねた得点が在所順位として、お客さまが車券を購入、推理する材料の一つになります。

 もちろん、すべての候補生は1着を目指して競走訓練を重ねていきますが、一人ひとりがそれぞれに考えていることは異なっています。自分の理想の走りを思い描き、戦法や勝ち方にこだわってみたり、先輩や師匠の競輪選手からもらったアドバイスを試してみたり、時には自分の苦手な戦法にチャレンジして、他の候補生の虚を突く走りをしてみたりと、数字や着位だけでは表すことのできない候補生同士の切磋琢磨が日々あるのです。

 私もまだ、自分の得意戦法や理想の走り方を追い求めている途中です。「T教場」(※)に班編成され、滝沢正光所長に直接ご指導をいただける機会にも恵まれているので、トラック中距離種目で身に付けてきた体力を武器に、どんなに長い距離でも先頭で風を切っていけるような「先行選手」を目指し、日々の苦しいトレーニングにも全力で挑戦し続けていきます。

 ※T教場…記録会で特に優秀な成績を収めた候補生を滝沢所長が直接、指導する訓練班

 ☆しんむら・みのり 1993年10月16日生まれ、27歳、神奈川県出身。177.7センチ、73キロ。法大卒。トラック中距離、ロードだけでなく様々なレベルで活躍するため“トータルサイクリスト”と呼ばれている。