熱海市は2日、肝臓がんのため7月19日に市内の病院で死去した世界的バイオリニストで声楽家、佐藤陽子さん(享年72)を悼み、記帳所を設けたことを市のウェブサイトで告知した。訃報が流れた1日に設置されており、31日まで。佐藤さんはパートナーの芥川賞作家・池田満寿夫さん(1997年に63歳で死去)と熱海で暮らした。

 記帳所は池田満寿夫記念館と池田満寿夫・佐藤陽子 創作の家に設置。後者は、市のサイトによると「天才と呼ばれた二人が82年12月から97年3月に池田満寿夫氏が亡くなるまでの間、住居兼アトリエとして過ごしました」という場所。2人の芸術家は「版画、油彩、陶芸、書、小説、などマルチアーティストの名をほしいままにした芸術家、池田満寿夫。幼い頃から才能を認められ世界を舞台に活躍したヴァイオリニスト、佐藤陽子」と紹介されている。

 世界3大音楽コンクールの一つ「チャイコフスキー国際コンクール」で3位入賞を果たし(66年)、声楽家としても活躍した佐藤さん。池田さんが77年に「エーゲ海に捧ぐ」で芥川賞を授賞した後の80年、2人は「結婚」を宣言してメディアをにぎわせた。

 ともに多才なカップルはテレビ番組にも出演。池田さんが撮影した佐藤さんの裸身が雑誌のグラビアを飾ったことも。やがて熱海に移り住み、天命を全うした。

 クラシック音楽家にして、クイズ番組など大衆メディアにも登場していた佐藤さん。バイオリニストでタレントの高嶋ちさ子らにとって先駆者といえる存在だった。