山口県阿武町の新型コロナ給付金4630万円の誤送金問題で、電子計算機私用詐欺罪で起訴された田口翔被告(24)が1日、保釈された。被告側が保釈保証金250万円を山口地裁に納付した。会見で弁護士が、人気ユーチューバーのヒカル(31)が未返済分を立て替えて支払うなど「ホワイトナイト(白馬の騎士)」を引き受けていたことを明かした。田口被告を巡っては出版社が書籍化、ユーチュバーがコラボをかけて争奪戦を繰り広げていたが、ヒカルが独占インタビューに成功したわけだ。

 保釈された田口被告は黒のスーツ姿で警察署を出たが、自身の長い髪が強風にあおられ、顔が覆われるというハプニングが起きた。報道陣に向かって深々と頭を下げ、言葉を発することなく用意された車に乗り込んだ。田口被告は文書で「この度は私の行動で多くの方にご迷惑をおかけして大変申し訳ありません。保釈後は仕事をして、借り入れたお金を少しづつ返済していこう思います」とコメントした。

 誤送金の4630万円については6月末にほぼ全額回収が完了しているが、そのうちデビット決済で出金した約340万円についてはヒカルが立て替えたという。田口被告が保釈後に乗り込んだ車にはヒカルが同乗。正午過ぎに保釈され、午後3時36分にヒカルが「4630万円誤送金問題の田口翔くんを保釈直後に独占インタビューしました。その様子は本日19時半からヒカルチャンネルでプレミア公開します」とツイートするといった用意周到ぶり。

 田口被告を巡っては、元迷惑系ユーチューバーのへずまりゅう(31)やユーチューバーのシバターが返金に協力すると名乗りを上げていた。へずまは以前、ツイッターで「俺がお前の4630万円肩代わりしちゃるけ みんなにお金返さんか? 俺はお前の気持ちが分かる。自分の情報がメディアに晒されたら辛いよな 変わりたいならDMしてこい」と呼びかけ、この日も山口南署に出向いていた。しかし、「周りに止められて、建造物侵入や公務執行妨害で捕まらないか心配で、手も足も出ませんでした。面会も拒絶されましたし、ヒカルに先を越されました」と落胆した。

 それもそのはずで、田口被告からヒカルにコンタクトを取っていたのだ。

「ヒカルチャンネル」で独占インタビューに至った経緯についてヒカルは、田口被告が弁護士を通じて「4000万円貸してくれないか?」と申し出があったことを明かした。

 誤給付金を「オンラインカジノに使った」という田口被告に非があったとしても「誤送金がなければ人生が狂ってなかったと思う。なにか力になりたいと思って」とホワイトナイトに名乗りを上げたという。さらに「田口君なんか広告塔になるんじゃないかなって。ビジネスにつなげられるんじゃないかなっていう僕の独自の発想ですね」との計算もあった。

 狙い通り、動画は大反響。今後についてもヒカルが株を保有する「究極のブロッコリーと鶏胸肉」事業のネットの仕事を田口被告に任せ、その中で更生していく様子を追いかけていくという。

 大手出版関係者は「書籍化するには内容が薄いのでウチは手を引きましたが、動いてる社はいくつもあったようです。田口被告には印税よりもユーチューブの収益の方がメリットがある。ヒカルも立て替えた額以上のお金をすぐに稼げると思いますよ」と話した。

 何でもエンターテインメント化し、収益化してしまうユーチューバーたちの勢いは止まりそうにない。