立花党首の“へずまりゅう認定”はならず。NHKへの威力業務妨害などの罪に問われた「NHKと裁判してる党弁護士法72条違反で」(NHK党)の党首・立花孝志被告(54)に対し、東京地裁は20日、懲役2年6月、執行猶予4年の判決を言い渡した。この結果に苦虫をかみつぶしたのはNHKだろう。刑務所へ送り込まれず、バトルが続くことになるからだ。

 立花氏が罪に問われたのは2019年にN国党(当時)を離党した二瓶文徳中央区議に「こいつの人生潰しにいきますから」とユーチューブ上で発言した脅迫と、NHK集金人の持つ情報端末にある契約者情報をユーチューブ上で公開し、上田良一NHK会長(当時)に面会を迫ったことが不正競争防止法違反と威力業務妨害の罪に問われていた。

 有罪判決ながらも執行猶予が付いたことに立花氏は「全く反省していません。今回の裁判、勝ちか負けかといえば勝ちです。すべて想定の範囲内。執行猶予が付けば(生活は)なにも変わらない。党首を辞めるどころか、懲罰もない」と満面の笑みで、あくまで無罪判決を目指すとして、即日控訴した。

 さらに注目を浴びる判決後というタイミングを見計らって、党名を「NHKと裁判してる党弁護士法72条違反で」から「NHK受信料を支払わない国民を守る党」に変更した。

 立花氏は判決でNHK側の主張を退けた点を成果として、強調する。公判で検察は立花氏を「NHKの批判に利用できる動画を作成・入手し、ユーチューブに投稿する活動を行っていた」とした上で、不正利益を得る目的を持った炎上・迷惑系ユーチューバーであるとの前提で、犯罪事実を立証しようとし続けていた。

 一貫して無罪を主張し続けていた立花氏だが、この迷惑系扱いには特にかみつき、最終弁論では「国政政党にまで押し上げた被告人の成果と地位をないがしろにし、軽んじ、あたかも単なる活動家、再生数稼ぎのユーチューバーとしか認識していないかのようにみえる。時代錯誤の発想」と立花氏の弁護人が喝破する場面もあった。

 この主張が認められ、判決ではユーチューブ投稿に利得目的はなかったとして、検察側が求めた罰金30万円は認められなかった。立花氏は「裁判所は明確に収益目的でない、政治家としての活動として行っていたとの有益な判断だった」と話し、「へずまくんみたいに目立ちたいから迷惑行為をしているわけじゃない」と元迷惑系ユーチューバーのへずまりゅうを引き合いに出し、あくまでNHKからの被害者側に立った上での行動だったと力説した。

 執行猶予が付かない実刑判決も想定していたという立花氏は「NHKとしたら、なんとか立花を刑務所に送り届けて、活動をやめさせたい思惑があっただろう」と、してやったりの表情で、「(収監された場合は)NHKの被害者の相談を受けられなくなるのが一番嫌だった。裁判官はある意味、これからも(NHKと)戦ってくれという意味も入っているのかな」とポジティブな解釈もしてみせた。

「今回の判決で失うものは何一つない」とした立花氏だが、NHK側も完敗したわけではない。

 NHKは「今後も業務への妨害行為などには毅然と対応し、個人情報の管理を徹底していく」とのコメントを出したが、執行猶予期間中に立花氏が別の事件で有罪判決が出た場合は、今回の2年6月と合わせて収監となる。立花氏の弁護人も「気を付けてください」とクギを刺している。イエローカードを1枚もらったともいえ、これまでのようなむちゃはできなくなったことも事実だ。