緊迫の度合いを増してきた。東京五輪で日本勢のメダルラッシュが続く中、27日は東京都で新たに2848人の新型コロナウイルス感染が確認された。過去最多を更新し、緊急事態宣言下にもかかわらず感染拡大に歯止めがかからない状況だ。五輪関係者も例外ではなく、大会組織委員会は検査で選手2人を含む7人が陽性だったことを発表。感染症に詳しい現役医師は今後「1日5000人」規模の感染者を想定しつつ、コロナ禍と五輪が結びつけられることを危惧している。


 衝撃的な数字だった。東京都が発表した新規感染者2848人は1週間前の同じ曜日の倍以上で、1月7日の2520人を上回り過去最多を更新。緊急事態宣言下にもかかわらず感染拡大に歯止めがかからない状況が続いている。

 ただ、23日に開会式を迎えた五輪はこの日も柔道やソフトボール、重量挙げ、新競技のサーフィンで日本勢がメダルを獲得。ほとんどの会場で無観客開催となったが、列島は大いに盛り上がっており、多くの国民が選手の活躍に注目している。ただ、コロナ禍は五輪関係者も例外ではない。組織委は新たに選手2人を含む7人が検査で陽性になったことを明らかにした。そのうち選手村からは1日最多4人の感染が判明し、組織委が1日以降に発表した陽性者は計160人となった。

 五輪期間中の感染者急増で大会への影響も懸念される中、医療ガバナンス研究所副理事長で内科医の上昌広氏(52)は現状を「予想通りですよね。夏場の定期的な流行の時期にデルタ株がかぶっているので、五輪を開催していても、そうでなくても(感染者は)増えていると思いますよ」と分析する。

 上氏によれば、感染者数こそ違うものの〝上昇カーブ〟は昨夏と同じ傾向にあるという。

 昨年は6月末から8月上旬まで増加が続いた。そうしたことを踏まえ「デルタ株の感染力によってはピークがさらに後ろにずれ込み、感染者が増加する期間が長くなるかもしれませんが(状況は)昨年と全く一緒。そして(昨年のデータをもとに)比例配分してみると7月末から8月上旬にかけて感染者は倍近くになるでしょうね」と、このペースが続けば1日5000人規模の感染者が確認されてもおかしくないというのだ。

 しかし、上氏はあくまで季節的な流行であり、五輪開催が要因とは考えにくいと強調する。「閉会のころに感染者が減ってきたら、きっと五輪のせいにされるんですよ。『やっぱり、五輪をやったから悪いんだ』と。それではアスリートがかわいそうですよ。五輪の影響なんて微々たるもの。他の都市も同じように増えているのが根拠です。五輪のせいなんて〝濡れ衣〟の可能性が高い」

 かねて9、10月の秋開催を提言してきた上氏は「〝五輪をやったから悪い〟ではなくて、この時期にやるのを決めた人たちが悪いんですよ。それが一番の問題で、専門家や政府がそのことを何らわびずに『国民が気を緩めた』とか言っているのは本末転倒。あなたたちが何を言っているのかということ」と痛烈に批判した。

 菅義偉首相はこの日、「強い警戒感を持って感染防止に当たっていく」と話した上で、東京五輪中止の可能性は否定したが…。さらなる感染の拡大が選手たちの活躍に水を差さないことを祈るばかりだ。