襲われたら限りなく生還率が低いヒグマ…遭遇したらどうすればいいのか

2021年04月12日 11時15分

“進化”しているヒグマに遭遇したら…(写真はイメージ)

 早くもヒグマによる死亡事故が発生…。山菜採りのため妻と北海道・厚岸町の山を訪れていた60代の男性がヒグマと遭遇し、もみ合いの末に死亡した。男性を襲ったヒグマは見つかっていない。冬眠から目覚めたばかりのヒグマは餌を求めて活発に動くため、人が遭遇する可能性も高まる。さらに“新世代”ともいえるタイプも出てきているとあって、専門家は警鐘を鳴らしている。

 ヒグマに襲われた男性の死因は、頭部と頸部をかまれるなどした挫滅によるものだった。男性がヒグマともみ合っているところを目撃した妻は急いで110番通報したが、男性は助からなかった。

 例年、北海道のヒグマは3月に入ると冬眠から目覚めて動きだす。今回の事故現場から遠くない浜中町では、3月上旬から道東の幹線道路である国道44号などで目撃情報が複数あった。

 北海道猟友会砂川支部長の池上治勇氏は「事故が起こらなければいいが、と思っていた矢先だった」としてこう話す。

「今冬の北海道は雪が多かったので、冬眠から目覚めたヒグマが餌を求めてより人里に近いところまで下りてきやすい環境にあり、山菜採りの人が遭遇する可能性は例年より高い。厚岸町の隣町である浜中町で目撃情報が多かったので、もう少し注意すべきだった」

 ヒグマは冬眠から目覚めると、餌を探して活発に山林を動き回る。そのため例年、春に山菜採りの人がヒグマの犠牲になることが少なくないという。

 ヒグマとの遭遇を避けるためにクマよけの鈴を身に着ける人も多いが、池上氏は「クマ鈴は気休めでしかない」として、別のヒグマ回避法を明かす。

「クマ鈴の音は、そう遠くまでは聞こえるものじゃない。危険を回避するためには、もっとハッキリ存在をわからせるために大声を上げながら歩くのが最も有効。それでも遭遇するときは遭遇してしまう。そうなれば自らの生死をかけて戦うしかない」

 もちろんクマ撃退スプレーを持参していたら使うに越したことはないが、突然ヒグマに遭遇したら、そう簡単に安全ピンを抜いてヒグマを引きつけて噴射、といった行動はできない可能性が高い。そのため池上氏は「ストックなど距離を取れるものを持って、襲われそうになったら目や口を目がけて突き刺すしかない」という。

 近年は北海道全域でヒグマによる被害が多発している。明治開拓期以降、三毛別事件に代表されるヒグマによる人身被害多発の影響で駆除は奨励されてきたが、生息数の減少から1990年に「春グマ駆除」が廃止。一転、道内のヒグマ生息数は急激に増加し、ヒグマ被害が急増している。

 また、気になることも起きつつあるという。

「最近は冬眠をしない“新世代グマ”が現れだしている。冬眠のため巣穴に入っても、ときどき巣穴から出てきて餌を食べているようだ。今はバックカントリースキーだとかスノーボードで冬山に上る人がいるが、冬だからといって安全とは言い切れなくなってきている」(池上氏)

 冬の北海道ではヒグマに対する警戒心が薄くなりがちだが、もはやそんな悠長なことを言っていられる状況ではないのだ。

 これから北海道は山菜採りのピークを迎える。ゴールデンウイークには新型コロナ禍の密を避けて山に入る人も少なくないだろう。しかし、北海道には襲われたら限りなく生還率の低いヒグマが生息していることを忘れてはいけない。

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