14日に開幕したカンヌ国際映画祭で、フランスの名優アラン・ドロン(83)に名誉パルムドール授与が決まったが、ドロンが同性結婚に反対し「ゲイは自然に反している」などと発言していることや「女性を殴ったことがある」と公言していることから物議を醸し、人権団体や女性から抗議の声が上がっている。

 ドロンは過去複数のインタビューで、女性への暴力を認め、2013年には「同性愛カップルは養子を迎えるべきでない」などと発言。また、同国の極右政党「国民連合」(旧国民戦線)のジャンマリ・ルペン党首と親交があることを認めている点も問題視されている。

 これらの批判に対し、同映画祭のティエリ・フレモー代表は記者会見で「我々はノーベル平和賞を贈るわけではない。贈るのは俳優としてのキャリアに対する名誉パルムドールだ」と主張。ドロンの考え方は完璧ではないとしながらも、発言の自由だとして授与は変更しないことを明言した。

 またフレモー代表は、今回の抗議活動や授与取りやめを求める署名活動が米国で始まったことに「気候変動に関する署名活動がなぜ米国でもっと積極的に行われないのか理解できない。米大統領が関わっているのに…」と同国の活動家らを揶揄(やゆ)した。その上で「最近はすぐに“政治警察”がしゃしゃり出てくるので、誰かをたたえる賞を授与するのが難しい。ドロン氏は完璧ではないし、私も完璧ではない」と述べた。

 1957年に「女が事件にからむ時」で映画デビューしたドロンは「太陽がいっぱい」(60年)、「太陽はひとりぼっち」(62年)や「地下室のメロディー」(63年)、ルキノ・ビスコンティ監督がパルムドールを受賞した「山猫」(63年)などに出演。60~70年代にかけ、フランスのトップ俳優として活躍。欧州のみならず、日本でも絶大な人気を博した。授賞式は19日に予定されている。