ヒット曲「夏の日の1993」「ガラス越しに消えた夏」など、時代を超えて愛される名曲の数々を手掛けた作詞家、故・松本一起さんが遺した未発表詞が、新たな形で令和の音楽シーンに届けられている。先日、その第1弾となる楽曲「今がここにある」が配信リリースされた。

 プロデュースを務めるのは、生前に松本さんのマネジャーとして長年活動をともにした菅野恵子氏。菅野氏は松本さんから約200曲もの未発表詞を託されており、それらを少しずつ世に送り出していくという。

 今回発表された「今がここにある」は、AIを活用しながらItoAki氏が作曲を担当。ボーカルにはAIシンガー「Kirala」が起用された。

 松本さんは2022年に亡くなった。「バブルガム・ブラザーズ」のブラザー・コーンが同年12月にリリースした自叙伝的ベストアルバム「魂信。」のサブタイトルにもなった1曲「My Life is in Destiny」が松本さんの最後の提供作品という〝遺作〟となった。

 生前の松本さんは、音楽業界きっての人格者として知られていた。誰に対しても気さくで、若い世代にも分け隔てなく声を掛ける。その温かな人柄から交友関係は非常に広く、関係者によって開催された偲ぶ会には音楽業界だけでなく政界からも多くの著名人が参列した。中には学生時代に松本さんにかわいがられていた人物が後に閣僚となり、国政の中枢で活躍しているという逸話も残されている。

 約200曲という膨大な未発表作品群。その1曲1曲には、松本さんという稀代のヒットメーカーが未来へ託した思いが詰まっている。菅野氏による遺作プロジェクトは始まったばかりだ。