“女芸人マニア”として知られているお笑いコンビ「馬鹿よ貴方は」の新道竜巳が、これから“馬鹿売れ”しそうな女芸人を紹介するこの連載。今回はいつもと趣向を変えて、とどまることを知らずに活躍している女性ピン芸人を“馬鹿売れ”する前から振り返り、分析してみた――。

 多くの女芸人がいますが、中でもすごいのはゆりやんレトリィバァさんです。何かに追われているかのように努力し続けるその姿勢には尊敬してしまいます。そこで、ゆりやんさんが歩んできた芸人人生を振り返ってみたいと思います

 まず芸人として最初の実績は、“NSC首席”です。ゆりやんさんは吉本興業の養成所であるNSC大阪校に35期生として2012年に入学し、首席で卒業しました。ただNSCで首席になると必ず売れるかというと、そんなに甘い世界ではありません。むしろ当時は、首席が売れるケースの方が少なく、「首席になると辞めていく」とすら言われていました。

 しかし、ゆりやんさんは半端じゃなかった。NSCを卒業して2年目にはピン芸人日本一決定戦「R―1ぐらんぷり2015」で3位になり、その強烈なキャラクターで一気に名前を知られる存在になりました。

 私が初めてお会いしたのは16年7月、フジテレビの「27時間テレビ」の中で行われた「笑わせたもん勝ちトーナメント KYO―ICHI」でした。大部屋の楽屋に出演者全員集まっている中、ゆりやんさんは一番後輩というのもあり、遠慮して廊下でずっと練習をしていたのが記憶に残っています。

 その後、覚悟を決めて楽屋に入ってくると、途端にボケ続けた。楽屋でも本番同様に振る舞う彼女の姿勢にはカッコよさが漂ってました。ちなみに、この時に優勝したのは兄弟漫才コンビのミキでした。ほかにも当時はまだ売れていなかったニューヨーク、チョコレートプラネット、どぶろっくなどが出演。ある意味で伝説の大会です。

 その後、ゆりやんさんは17年、女芸人ナンバーワン決定戦「THE W」で優勝しました。この時、1本目で披露したドラえもんネタが特に素晴らしかった。

 ドラえもんやサザエさんなど、超有名アニメネタは表現を間違えるととんでもなくスベることが賞レースではよくあるんです。分かりやすいネタなので普段のライブではウケやすいのですが、賞レースだと定番の設定ネタが鮮度に欠けるうえ、他の出場者とネタがかぶることが多い。そうなるとお客さんが見る気すらなくしてしまいます。

 しかし、ゆりやんさんが演じたドラえもんネタはすごく説得力があり、お客さんに見たいなと思わせる魅力が憑依する。ネタの後半では、“芸能界事情あるある”のようなものも取り入れ、ドラえもんに憑依したゆりやんさん本人の思考を見せるという、意外性に富んだ見せ方がとても面白かった。ここがセンスの見せどころだったような気がします。

 バラエティー番組での立ち居振る舞いも興味深い。自分でも想像が行き届かないボケをすぐその場でやる勇気が素晴らしい。とにかく手数が多く、全くウケないこともあるのだが、次から次へとボケるので結局盛り上げてしまうんです。

 ゆりやんさんがすごいのは、優勝した後も賞レースに果敢にチャレンジするところ。「THE W」には何度も出場し、さらにR―1でも21年に優勝。そのうえ19年には「アメリカズ・ゴット・タレント」に出場するなど、そのチャレンジ精神に頭が下がります。

 もはや活躍は芸人だけにはとどまりません。24年に配信されたネットフリックスドラマ「極悪女王」で、主演のダンプ松本役を演じたことは記憶に新しい。引き込まれる演技力でも話題になり、女優としても高く評価されました。

 作品の序盤に見せた、気弱ないじめられっ子の演技は何の違和感もなく、ゆりやんさんが演じているということすら忘れさせるぐらい役に憑依していた。役作りのために体重を40キロ増やしたことも話題になりました。

 ゆりやんさんの飛躍はとどまることを知らず、現在は海外で活動中です。これからどんなサクセスストーリーを見せてくれるのか? 全く目が離せません。

 ☆しんどう・たつみ 1977年4月15日生まれ、千葉県出身、本名・濱島英治郎。平井“ファラオ”光と組む「馬鹿よ貴方は」として「THE MANZAI」「M―1グランプリ」で決勝進出を果たした実力派。緻密なネタ作りに定評がある一方、女芸人ナンバーワン決定戦「THE W」では、予選会場に足しげく通い、ほとんどの出場者のネタを見るほどの“女芸人マニア”。